暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方3
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体を乗っ取った殺戮衝動そのものだった。呼びかける暇もない。一瞬で間合いが詰められる。後ろに飛び退いて――そして、気づいた。結界の内壁にぶつからない。精々が五歩程度しか踏み入っていないはずなのに。つまり、出られない。ゾッとしながら、それを認めた。
(そうか! この結界は……ッ!)
 何のことはない。この結界は、外からの侵入を防ぐのではなく、中からの脱出を拒むものだったのだ。つまり、自分が暴走しても余計な被害を出さないように。それはいい。
 だが、厄介なのは――
「クソッ! 何だ、この暴走体は?!」
 巨大なネズミ。巨大な猫。さっきの甲冑もどきに、太った女と鶏を悪趣味に混ぜ合わせたような怪物。見渡す限り怪物だらけ。御神光が――その姿をした怪物が一匹殺すたびに次の一匹が現れる。つまりここは、殺戮衝動を満たすための屠殺場だ。そんなところにのこのこと踏みこんでしまった僕もその哀れな犠牲者の一人に過ぎない。まったく、我ながら迂闊にも程がある。
「クソ! 正気に戻れ、御神光! お前はあの子を助けるんだろう!?」
 他の怪物たちを盾にしながら、御神光に呼びかける。あの少女も、その使い魔の行方も分からない。彼女の『母親』はあの子自身を標的にして次元魔法を叩き込んだ。もしもあの二人が『母親』の傍にいるなら――最悪は、もう殺されているかもしれない。
「こんな所で幻の『魔物』なんかと殺し合っている暇は、お前にはないはずだろう!?」
 周りの魔物は、僕にも見境なしに襲ってくる。ネズミもどきと猫もどきはともかく、甲冑と鳥女はかなり凶悪だ。この化け物の相手をしながらでは、猫とネズミも煩わしくて仕方がない。だが、何より脅威なのはやはりこの『魔物』だ。
「チッ!?」
 異形の双剣が自由自在に打ち込まれる。それをどうにかデバイスで受け止め、何とか軌道を逸らす。それが限界だ。これほど素早い剣戟ではブレイクインパルスによる武器破壊すら望めない。やはり、クロスレンジではまず勝ち目がない。派手に飛び散る火花に舌打ちしながら認める。
 そうこうしている間にも、人体の急所という急所を刃が軽く撫でていく。右頸動脈。左大腿動脈。胸部正中線よりやや左方――つまり、心臓の真上。脳天。眉間。手首。腹部。両側の鎖骨から斜めに胸部に向けて。あらゆる急所に向かって的確に放たれる斬撃や刺突。そのどれか一つを受け損ねただけで確実に致命傷に繋がる。
「スティンガー・スナイプ!」
 周りの魔物が光に襲いかかった。その隙に距離を開き、魔法を放つ。だが、肝心の御神光には当たらない。狙いが振り切られる。光もまた魔物を盾にしながら、こちらに斬りかってくる。
(一応は認めてくれたと考えるべきか……)
 どうにも素直には喜べないが……どうやら一番殺しがいがある相手だと認識してくれたらしい。周りの魔物を乱雑に斬
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