魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方3
[11/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
から。私は笑って答えた。そして、改めて空へと舞い上がる。その直前、何かが割れるような音がして。
『オイオイ。ひょっとして、これはちょっとヤバいんじゃねえか?!』
リブロムの叫びに応じる様に、二つの黒い人影が落ちてきた。
5
「クロノ、くれぐれも気をつけて」
「了解です」
結界で隔離した超高層マンション。その入り口で艦長と分かれ、僕は建物の内部へと踏み込んだ。結界の内部には微弱な魔力反応がある。いや、微弱というのは適切ではないのかもしれない。僕らの把握している魔力パターンと異なるため、正確な測定ができていないだけだ。だが、そんな事はどうでもいい。
今この建物には御神光がいる。つまり、生存確認ができたと言える。さらに言えば、これでジュエルシードの行方もほぼ確定した訳だ。これで御神光との対話に成功すれば、ロストロギアに関する問題の文字通り半分には決着がついたと言える。
(罠の類は、なさそうだな)
一般人が隔離されたマンションは――いかにも高級そうな洒落た造りではあっても――ごく普通の建物に過ぎない。トラップの類がある訳でもなく、住民が皆殺しになっていた痕跡もない。
(御神光を蝕む『魔物』とやらは、まだ覚醒していないという事か……)
取りあえず、このマンションの住民に被害が出ていない事は安堵すべき事だろう。ついで言えば、今のところこの周辺で大量虐殺が生じたと言うニュースもない。御神光の暴走という最悪の結果は、現時点では生じていないという事だ。
(最上階か。セオリー通りと言えなくもないが……)
経験上、特的武装組織や大規模な密売組織はそういった派手な場所をねぐらにしている事が多い。もちろん、ロストロギアの違法収集や転売を目的とした組織も。
とはいえ、この事件の本質はおそらくそう言ったものではない。
(せめてもの愛情だと言えるか?)
酷使する『娘』に対するせめてもの愛情。ろくでもない想像だが――せめてそれくらいの空想を抱きたいところだった。そう思う程度には、事件の全容が見えつつある。
なるほど。高町なのはが初めに言った通り、御神光というのは根本的に『お人好し』なのだ。……その目的を達成するために、手段を選ばないだけで。
(お互いに無駄な時間を過ごした。そう思わないか?)
エレベータを降り、最後の廊下を歩く。あくまでもあの少女を守ろうとする御神光と、この世界を守るべき自分達は結局のところどこまでも平行線にすぎない。だが、平行線だと自覚できる程度にはお互いが近しく、同じ方向を向いているはず。……それをこじれさせた理由は、なるほど確かに僕らにもあるか。
(あの少女を救う事とこの世界を守る事は決して矛盾しない。それにもっと早くに気づいていれば、ここまでこじれなかったかな)
乱れてしまった平行線を、せめて
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ