魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方3
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「貴様の甘さがうつったせいだ」
その魔女との旅を終えて一年ほどが過ぎた頃の事である。たまたま立ち寄った村で、自分はその魔女と再会する事になった。およそ三ヶ月ぶりだろうか。包帯まみれの姿で憮然としながら、彼女は自分を睨みつけてくる。
やれやれ。そんな事を言われても、自分はそう簡単に生贄にはできないのだが――何度目かの説明をした。もっとも、そんな事は彼女とて承知している。何故なら、旅の間にその理由を目撃したからだ。
「フン、好きなだけ若返る事が出来るとは良い身分だな」
不満そうに、彼女は言った。若返り――それが『マーリン』を生贄にした自分が被った代償だった。歴代のマーリンを苦しめた老化の呪いは、自分には生じなかった。それは恩師の加護――自らの意思で肉体すら作り変えたその力が宿ったからだろう。自分が望む限り自分は人間というこの『器』の形を保ち続けるはずだ。永遠に朽ちることなく。
それはいい。覚悟の上だ。だが、問題となるのはむしろ歴代の『マーリン』が――つまり、老化の呪いに囚われた彼らがどうやって生き延びてきたかだった。それは、言うまでもなく何かを生贄にしてその魂を喰らう事だ。それによって、老化を打ち消す。つまり、若返りを繰り返してきた。どうやら、その部分だけは今の自分にも残っているらしい。生贄にすればするほど若返ってしまう。しかも、基本的に年はとらない。正確には、『マーリン』を生贄にした時までは……つまり、二十歳そこそこまでは成長するが、それには相応の時間が必要となる。もちろん、『マーリン』ほど顕著に若返ってしまう訳ではない。というより、『器の形を保ち続ける力』は若返りに対してもある程度は抗う事ができるらしい。その効果はかなりばらつくが、今では慣れたもので一人二人生贄にしたくらいなら傍目に見て分かるほど若返る事は極めて稀だった。だが、だからと言って出会った魔物を悉く生贄になどしようものならたちまち胎児にまで若返ってしまうだろう。それでも死なないかも知れないが、試したいとはさすがに思わない。
ともあれ、一体どんな魔物に襲われたのか。それを彼女から聞き出す事にした。仇打ちと言う訳でもないが、彼女を返り討ちにできるような魔物を放っておく訳にもいかない。
「今から三日前の事だ」
さらに憮然とした様子で、その魔女は言った。何でも、彼女は別の魔物を排除要請を受けてその場に赴いたという。かなり凶暴な魔物だったらしいがそれでも排除する事に成功した。彼女を返り討ちにした魔物とは、その帰り道に遭遇したらしい。話を聞く限り不意打ちに近かったように思える。だが、
「不意打ちではないな。姿を見せてから襲ってくるまで時間があった。まるで決闘でも挑んでくるような様子だったよ」
一見して、元の姿が女だと分かる魔物だったという。それとよく似た魔物を、恩師
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