第十三章 聖国の世界扉
第七話 世界扉
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を持つ女性であった。
濡れたように滑らかな黒髪は小さな蝋燭の明かりに照らされ、夜空に輝く無数の星の煌きを見せ。ほんのりと色付いた滑らかな肌は、見る者をまるで誘うように吸い寄せる。柔らかな赤い唇は、まるで紅薔薇の蕾のようだ。
しかし、その数多くの魅力の中、最も目を引くのは黒曜石の如き輝きを見せる瞳。
見る者を引き寄せずにはいられない強い意志を感じさせるその目を大きく見開きこちらを見つめている。
「……彼女は一体?」
“世界扉”を発動させたヴィットーリオが、疑問の声を上げた時、女の瞳が涙に潤んだ。
『―――いた』
誰かを探すように彷徨っていた視線が士郎を捉え、女の口から歓喜の声が漏れた。
先程まで十分以上に美しいと感じていたが、それがまだ彼女の魅力を半分でもなかった事をヴィットーリオたちは知った。萎れかけていた花が時を巻き戻すかのように瑞々しく花開くかのような奇跡を目の当たりにしたかのように、息を飲んでその光景を見つめる。
『何よ……やっぱり生きてるじゃない……元気そうで……全く、心配かけ―――あれ?』
―――だが。
『ちょっと、待って……まさか……』
それも長くは続かなかった。
『また、なの……―――ッッこのッ! 人にこれだけ心配かけさせてっ!! その間にあんたはまた女を作ってッ!! しかもこんな小さ―――……え? ちょっと待って。ほんとに小さい……は? ちょ、本当にいくつなのよこの―――……え?』
士郎を見つめる女の目が、不安気に士郎の袖を引くルイズの姿を捉えた瞬間、純真な乙女のような美しく優しげな笑みを浮かべていた女の顔がみるみるうちに歪み、頭を掻き毟りながら怒声を上げ始めたのだ。
清純な聖女から一転して嫉妬に狂った般若へと変貌した女の姿に、知らず皆の足が一歩後ろに下がった。それは女の視線を一身に受ける士郎も同様であり、それどころか女が天を見上げ雄叫びを上げるかのように絶叫し視線が外れているのを良い事に、こそこそと逃げ出している始末であった。
ヤクザの事務所の金庫破りをしているかの如く、士郎は女の視界から隠れるため一歩一歩慎重に動いていたが、その慎重さ故の時間の掛かり過ぎが仇となり―――
『―――何隠れようとしてんのよアンタはっ!? 待ちなさいっ、待って! 待てコラッ!!』
士郎の不審な動きに気付いた女の声により呼び止められる羽目となった。
「―――ッっ?!」
士郎の足が条件反射的にビダリと止まる。もはや本能にまで染み付いた反応である。恐る恐ると士郎が顔を上げると、そこには段々と小さくなり始めた“世界扉”の姿があった。
『待て!! 逃げんなこのっ! このまま消えたらあんたまた実験に協力させる
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