第十三章 聖国の世界扉
第七話 世界扉
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――ぁ」
アンリエッタはティファニアの手を握る片方の手を開く。そこには、風のルビーの姿が。アンリエッタは自身の掌にある風のルビーを見下ろし、懐かしそうに目を細めた。
「この指輪は“風のルビー”……始祖の時代からアルビオン王家に伝わる指輪です。今ではもう、アルビオン王家の血筋があなたの他に全て途絶えた今、この指輪の持ち主として最も付さわしいのはあなたを置いて他にはいません。それに、あなたは“虚無の担い手”の一人。ならば、この指輪があなたの指にこそ嵌るのが道理と言えましょう」
「そんな大切なもの……それに、わたしは、エルフの……」
幸せに満ちたアンリエッタ声と、浮かべた笑みを見て、どれだけ指輪の前の持ち主の事を好きだったかを感じたティファニアは、そんな指輪を受け取れないと首を横に振ろうした。
「―――これは、わたくしの我侭なんでしょう」
「え?」
が、それはアンリエッタの何処か困ったような笑みと泣きそうな声により、自身の上げた戸惑いの声と共に止まった。
「この指輪の前の持ち主は、わたくしにとってとても大切な方でした。その方はとてもお優しく、わたくしの事も、そう……妹のように可愛がってくださいました。あの方にとって、あなたは妹のようなもの、なら、あの方も、この指輪があなたの手にあれば喜んでくれると思うのです。だから……これはわたくしの我侭でもあるのです」
「………………」
アンリエッタの浮かべた微笑みは、まるで氷細工のように美しく―――儚い輝きに満ちていた。些細な切っ掛けで、一瞬で溶け崩れてしまいそうな、そんな淡く脆い―――しかし美しい笑み。
ティファニアは、ただ、その笑みを前に何も言えず、ただ立ち尽くすだけで……。
「どうか、受け取ってくれませんか?」
「……わかりました」
だから、ティファニアには断る事が出来ず、頷く事しか出来なかった。
「……ありがとう」
「―――それでは、ミス・ルイズ。“始祖の祈祷書”をティファニア嬢に見せてあげてください」
ティファニアがアンリエッタから手渡された風のルビーを指に嵌めている姿を横目にしながら、ヴィットーリオはルイズに促す。
「え? 何故でしょうか?」
「あなたが持つ“始祖の祈祷書”―――“始祖の秘宝”と呼ばれるものは、虚無の魔法という宝が詰まった箱のようなものです。おさめられた“魔法”は、“始祖の秘宝”によって違います。そして、その箱を開けるための鍵が、今ティファニア嬢が指に嵌めた“指輪”なのです。ですから、ミス・ルイズ。あなたの手にあるその“始祖の祈祷書”をティファニアに見せてあげてください」
自分の手にある“始祖の祈祷書”を見下ろしたルイズの脳裏に蘇る言葉―――『必要があれば読
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