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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第七話 世界扉 
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 伝説の系統魔法―――“虚無”。記録では歴史上始祖ブリミル以降誰も担い手がいない謎に満ちた系統であり、歴史を研究する者の中には、“虚無”という系統は存在しないとさえ口にする者がいるほどに、“虚無”は謎に満ちた系統である。それは担い手であるルイズであってもそうだ。虚無について特別に詳しいというわけではない。いくら公爵家の娘とは言え、伝説の彼方にある“虚無”について知り用などないのだから。
 だが、ブリミル教の教皇ならば、自分の知らないナニカを知っていたとしてもおかしくはない。もしや、そのナニカを教えてくれるのでは、とルイズの高まる期待は表情から見て取れる程であった。ヴィットーリオはルイズのそんな期待を感じたのか、微笑ましそうに口元に笑みを作ると小さく首肯した。

「ええ。そうですね、では、ミス・ルイズ。あなたは“虚無”に、他の魔法のようにそれぞれ系統に似たものがあるということを知っていますか?」
「“虚無”に系統ですか?」

 勿論知らない。だが、何となく理解は出来る。もう一人の“虚無の担い手”であるティファニアの“虚無”は、自分の“虚無”とはまるっきり別物だからだ。それこそ別の系統と言える程に。
 自分の言葉をルイズが理解したのを感じたのか、ヴィットーリオは小さく頷き続きを口にした。

「そう、あなたの“虚無”のように、直接的な“攻撃”としての力もあれば、敵を惑わす力もありますし、他にも様々な“虚無”が存在します。わたくしはその中でも、どうやら“移動”を司る“虚無”のようです。使い魔も似たようなものですね。『神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空』―――そう、歌にあるように」
「それでは、使い魔がミョズニトニルンであるガリアの担い手は一体どんな……あ、じゃあティファニアの方は―――」
「ええ、それも確かめるために、あなたには“始祖の祈祷書”をお持ちいただいたのです」
「確かめる、ですか?」
「そうです。では、アンリエッタ女王陛下」

 『手はず通りに』と、ヴィットーリオはアンリエッタに顔を向け何かを促す。アンリエッタはヴィットーリオに頷いて見せると、自身の指に嵌めた指輪―――風のルビーを外し、ティファニアに差し出した。

「え? あ、あの、これは……」

 差し出された指輪を前に、ティファニアが戸惑った声を上げる。

「あ、アンリエッタさま?」
「お受け取り下さい」
「え? で、でも……」

 緊張と焦りに顔を赤くしたティファニアが身体を縮めて恐縮する。小さな子供のように震えて涙目になったティファニアを落ち着かせるようにアンリエッタは優しく微笑むと、目の前に震える震える手を自身の両手でそっと包むようにして握った。

「……どうか、受け取ってください」
「―
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