第十三章 聖国の世界扉
第七話 世界扉
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「っ、な―――」
士郎の驚愕の声が上がる。
「―――にっ!?」
足下の床が―――無くなっていた。
一瞬の浮遊感の直後に、内蔵が持ち上がる不快感。咄嗟に下に向けた目には、暗い闇だけが広がって―――ない。
「これ、は―――!?」
無くなった床の代わりに広がる底なしの闇。
その中心―――自分が落ちる先には、銀色に輝く鏡のような……。
「―――ヴィットーリオォォッ!!」
「……どう、したらいいの」
窓際に移動させた椅子の上で、足を抱えながらルイズは窓の向こうに見える朝日が昇る光景をぼうっとした眼差しで見ていた。
足を抱えていない手持ち無沙汰の手を椅子の隣に寄せたテーブルに伸ばし、カップを掴み昨夜から何十杯目かのお茶に口を付けた。少しでも寝ようと、よく眠れると勧められたお茶を飲んでいるが、少しも眠くはならない。瞼を閉じても、眠気は迫らず、暗い闇の中には、その度に同じ光景が浮かび上がる。
殆んど白湯のお茶を機械的に喉の奥へと流しながら、ルイズは昨夜から何十回も繰り返し思い出していた光景を瞼の裏に映し出す。
「―――トオサカ、リン」
ヴィットーリオが唱えた虚無の魔法により現れた“世界扉”に映ったいた女性に、ルイズは見覚えがあった。
たまに見る不思議な夢。
その夢の中に、時々出てくる士郎が『リン』と呼ぶ女性。
夢の中で、士郎はその女性ととても親しそうだった。
いや、それ以上に感じた。
きっと、彼女は士郎が好きで、士郎もまた、彼女が好きなのだと。
……あの人……シロウに気づいた時、凄く嬉しそうだった。
目の縁が熱く濡れ、流れ出たものが頬を撫でる。
思い返す度、同じ問いがぐるぐると回るが、ルイズはそれに―――
「―――わたし」
―――元の世界に戻りたくはありませんか?
「……どうしたら、いいの」
―――答えることは出来なかった。
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