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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第七話 世界扉 
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ていると、ふと視界に左手に刻まれた命呪が目に入る。
 そして思い出される言葉。
 
 『これより我が剣は貴方と共にあり、あなたの運命は私と共にある―――』

 ―――まさか、な。

 かつて聖杯を巡る戦争において、使い魔は召喚者(マスター)の武器でもあった。
 そして、セイバーがこの世界(ハルケギニア)に来たのは、自分が召喚された後だと本人の話からは推測される。もし、異世界(士郎の世界)から来る“武器”が“ガンダールヴ”の為に来るのだとすれば、確かにセイバーは最強の武器とも言えなくもない。
 
 ―――流石にそれはない、とは思うが……。

 自分の飛躍しすぎる考えに対し、苦笑を浮かべ頭を振り否定する士郎に、ジュリオの声が掛けられた。
 背中越しに聞こえた声に士郎が振り返ると、ジュリオが部屋の入り口の近くに立っていた。話をするには明らかに不自然なほどに遠い距離。瞬間、士郎は嫌な予感を胸に抱いた。

「どうした。上に戻るのか?」
「ええ、ですが、その前に一つだけシロウさんに質問があります」
 
 士郎はジュリオから目を離さず、僅かに腰を落とす。
 いつ何が起きても直ぐに行動に移れるように、適度に身体を脱力させながら、息をゆっくりと吸う。

「質問、か」
「……もう一度あなたに聞きますが、ぼくたちと共に、聖地を回復するための戦いに加わってはくれませんか」

 ジュリオの誘いの言葉に対し、士郎は―――

「それに答えるには、まず俺の質問から先に答えてもらわなければな」
「そう、ですか」

 何故、教皇たちはそこまでして“聖地の回復”に拘るのか―――その答えを士郎はまだ聞いてはいない。
 その答えを聞かなければ、士郎も安易に答えを出すことは出来ない。
 士郎のその言葉に、ため息と共にジュリオは顔を下に向ける。

「どうしても……答えなければいけませんか?」
「何故、そこまで答えることを渋る。そこまでして隠さなければならないのか?」
「ええ。今はまだ、隠さなければなりません。ですが、その内誰もが知ることにはなるでしょう」

 ゆらり、と顔を上げたジュリオが、士郎に笑みを向けた。

「っ」

 松明と魔法の弱い光に浮かび上がるその美しい顔には、何時もと同じ笑みが浮かんではいるが、士郎はそこに悲しみと決意の意志を感じた。

「それまでには、けりをつけなければなりません。ですから、これ以上待つことは出来ませんし―――」

 ジュリオは士郎に話しかけながら部屋の壁へと手を伸ばす。

「―――あなたに邪魔をされては困るのです」
 
 瞬間―――ガコンッ、と何かの装置が起動した音が響く。
 同時、士郎は自身の直感を信じ床を蹴りジュリオとの距離を詰める―――ことはできなかった。

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