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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第七話 世界扉 
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ともに優れ、大戦においてはタイガー戦車を見かけただけで連合兵士が逃げ出す“タイガー恐怖症”が起きる程に恐れられた戦車である。
 グレーのペンキが分厚く塗られた装甲に描かれた鉤十字のマークに手を当て、士郎はジュリオに向き直った。

「俺にコレを見せた理由は何だ」
「あなたに進呈するためですよ―――“ガンダールヴ”」
「進呈、だと?」

 士郎が疑問の声を上げると、ジュリオはタイガー戦車をポンポンと手で叩きながらニコリと笑った。

「ええ、これら全ては、あなたのためだけに用意されたものです。こう言えばわかりますか? この部屋にあるものは全てあなたの“剣”であり“槍”です、と」
「“剣”と……“槍”?」
「シロウさんはこの歌を知っていますか?」

 そう言い、ジュリオは歌い始めた。
 聖歌隊の指揮を務めているというだけあって、その歌声は十分以上に優れたものであった。



 ―――神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。

 ―――神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。

 ―――神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。

 ―――そして最後にもう一人……。記することさえはばかれる……。

 ―――四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた……。

 

「……ああ」

 かつて、士郎はティファニアが歌うそれを聞いたことがあった。

「あなたが全ての武器を扱うことが出来るガンダールヴで、ありとあらゆる獣を操るヴィンダールヴがぼく。そしてガリアにいるのがどんな“魔道具(マジックアイテム)”でも使いこなすミョズニトニルン。まあ、最後の一人はぼくも良く知らないんですが……。それは今は関係ありませんね。ミョズニトニルンは……まあ、これも今はいいです。今はあなた。そう、ガンダールヴであるあなたの事です」
「ガンダールヴ、か」
「ええ、先程の歌にもある通り、ガンダールヴには片手それぞれに武器を持ちます。左手には大剣、右手には長槍」
「つまり、その槍とやらがこれと言いたいわけか」

 士郎がタイガー戦車に視線を向ける。
 ジュリオもタイガー戦車に顔を向け頷いた。

「ええ、かつて始祖ブリミルを守ったガンダールヴは、左手に持った剣で主を守りながら、右手の長槍で敵に攻撃を加えたと聞きます。その長槍とは、正確には槍そのものというわけではなく、その時代の最強の“武器”の事なんです」
「最強の“武器”、か。確かに、古代、槍は兵器の王とも呼ばれていたが」
「あなたもご存知の通り、強さと間合いは密接な関係にあります。間合いが遠ければ遠いほど、一方
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