第十三章 聖国の世界扉
第七話 世界扉
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を呼ぶ声に士郎とルイズが振り向くと、そこには憮然とした表情を浮かべたアニエスが立っていた。
アニエスは二人が振り返ったのを見ると、顎を引いて大聖堂へと顔を向ける。
「二人共陛下がお呼びだ。教皇聖下の執務室でお待ちになっている。ルイズは“始祖の祈祷書”を持って直ぐに来い」
必要な言葉を最低限伝えると、アニエスは踵を返し大聖堂へと足を向けた。踵を返す際、士郎に一瞬睨みつけるような視線を向けたアニエスだったが、何も言わず無言で歩き去っていく。何の用事かも言わずにさっさと歩いていくアニエスの姿に、ルイズはムッとした顔を見せる。士郎は機嫌を損ねたルイズの頭を軽く撫でるように叩くと、アニエスの背中を追って歩き出し、ルイズも同じく士郎の背中を追って歩き出した。
カツカツと靴音高く鳴らしながら進むアニエスの背中を見つめながら、士郎は『ふむ』と一つ息をついた。アニエスの何時も以上のおざなりな態度に、むくれてグチグチと文句を口にするルイズを適当にあしらいながら、士郎は考えていた。
アニエスが素っ気ないのは何時ものことだが、今日は何処か様子がおかしい。余裕がないというか、焦っているというか、何時も以上に不安定な姿を見せるアニエスの様子に、士郎が何やら考えているうちに、何時の間にか三人は教皇の執務室の前にいた。士郎たちの前で、アニエスが扉をノックすると、直ぐに扉の向こうから『どうぞ』との教皇からの許可の声が聞こえてきた。許可を受けたアニエスが扉のドアを開く。扉の向こうには、椅子に腰掛けたヴィットーリオとその隣に立つジュリオ、そして少し離れた位置にアンリエッタとティファニアが立っていた。
「お呼びたてしまいすみません」
士郎たちが部屋に入り、扉を閉めると、ヴィットーリオは椅子から立ち上がった。その時、士郎の視界の端に、ヴィットーリオの指に嵌められた指輪が映った。
「その指輪は―――」
「え? ああ、この指輪ですか。これは“四の指輪”の一つです。そちらのアンリエッタ陛下のお持ちのものと同様の。つい先ごろ、二十年ぶりにわたくしの手元に戻ってきたのです」
掲げるようにして赤いルビーの指輪を士郎たちに見せつけるヴィットーリオ。炎を結晶化したかのような緋色に輝く指輪を、士郎は細めた目で見つめながら呼び出した理由をヴィットーリオに尋ねた。
「呼び出したのは、あの時の返事を聞かせて欲しいとの事ですか」
「ははっ……確かにあの時の返事はそろそろ聞かせて欲しいですが、今日、あなた方を呼んだのはまた違う用事ですよ」
何時もの如く慈愛に満ちた笑みを士郎向けていたヴィットーリオの目が、鋭く細められた。
「少し“虚無”についてお話しようかと思いまして」
「“虚無”についてですか?」
小首を傾げながらルイズが眉根を寄せた。
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