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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第七話 世界扉 
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 明後日に教皇即位記念式典を迎える早朝―――士郎は清澄な空気に満ちる大聖堂の中庭に立ち、冷えた清らかな空気を吸いながら人心地を付いた。
 腕を組みため息を吐いた士郎は、薄霧により靄がかった辺りを見渡す。
 荘厳な寺院を包む朝霧の薄い白のヴェールを朝日が照らしたその光景は、感嘆のため息さえも飲むほどに神秘的な美しさに満ちていた。

「まったく、この国に来て落ち着く暇もないな」

 文句を言う割には、その口元には満足気な笑みが浮かんでいた。感嘆の息を漏らしながら、細めた目で自然と人工物が調和したその奇跡の光景を見つめる士郎。
 夜と朝の狭間の僅かな瞬間―――生まれ出てる一瞬の美。
 その一瞬の美に見惚れる士郎に―――

「―――な、なら、きょ、今日ぐらい訓練を休んだって……」

 ―――汗と疲労に濡れた恨みがましい声が掛けられた。

「訓練と言うのは一日休めば、取り戻すのに三日掛かる。さて、今日休むのと明日五倍の訓練を受けるのとどちらがいい?」
「―――な、何で五倍?」
「普通三倍じゃないか?」
「サービスだ」
「いやいや五倍はないでしょ五倍は……と言うかそんなサービスはいらねぇ」
「……って言うかいくら何でもこんなとこまで来てまで訓練するのはちょっとどうかと……」

 士郎を囲むように死屍累々と転がっているセイバーを除く水精霊騎士隊(ウンディーネ)の騎士たちは、先程まで口から中程まで出ていた魂を飲み込むと、口々に文句を口にし始めた。

「なんだ? 何か文句でもあるのか?」
「「「「ノー・サーッ!!」」」」

 士郎がギーシュたちを見下ろし鼻を鳴らすと、ギーシュたちは極度の疲労を訴える肉体に鞭を打ち立ち上がり一斉に敬礼を示す。
 その様を見て士郎は『訓練の成果が出てきたな』と満足気に頷く。

「良し。なら早朝訓練の仕上げだ。大聖堂を百周―――始めッ!!」
「「「「サー・イエッサーッ!!」」」」

 『水精霊騎士隊(ウンディーネ)は最強だ〜! 誰も彼もが道譲る〜! 最強無敵の騎士たちさぁ〜……!』煙る朝霧の向こうに、ドップラー効果を残しながら消えていく若き水精霊騎士隊(ウンディーネ)たち。士郎はやれやれと肩を竦めると、朝の冷たい風に吹かれ薄れゆく霧から姿を現す都市ロマリアを見やり―――ポツリと呟く。

「……さて、そろそろ結論を出さねばな」





 昼―――士郎は昼食を取るため、瀕死―――と言うよりも、もはやただの死体の如く転がっているギーシュたちを置いて食堂に向かっていた。食度に向かう途中、ぼうっとベンチに座り込み、何もするでなく空を見上げていたルイズと合流した士郎を呼び止める者がいた。

「―――ルイズ……それと、エミヤシロウ」
「ん?」
「何よ」
 
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