第1話 本当ハ静カナ町
[10/10]
[9]前 最初 [2]次話
横を通り抜け、テラスの先の階段にまっすぐ注がれた。
唇が開いた。
イヤホンの中から、その声が鼓膜を刺した。
「見つけて!」
指が重くなった。
引き鉄を引けなかった。
代わりに仲間が仕事をした。
守護天使は弾けた。弾け、消えた。
クグチはゆっくりと振り向いた。その守護天使が最期に見たものと、同じものを見た。
どうやって早川を振り切ったのか、テラスの手すりを握りしめて、灰色の髪を乱した老婆が息を切らして立っている。急激な運動と目の前で展開した出来事のせいで、顔が土気色だ。
やればやるほどわかってくる。本当はこんな仕事は嫌いだと。
老婆の膝は今にも折れそうで、大きく開いた口は体じゅうのものを吐きそうで、手すりに体を預ける。自然な動作に見えたが、しかし、続く不自然な動作は明らかに、彼女がわざとやったことだった。
老いた体が手すりの向こうに消えた。
銃を手にしたまま、クグチは声も出せずに手すりに駆け寄った。
老女の体が遥か下の車道に落ちた。
頭がくしゃりと苺のように潰れ、赤い果汁を散らした。
その上に路面バスが来た。バスは潰れた苺を車輪に巻きこみ、様々な体の部品をばら撒き、ブレーキをかけて停まった。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ