暁 〜小説投稿サイト〜
Magic flare(マジック・フレア)
第1話 本当ハ静カナ町
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の区別がつかない。自分を死んだ人間だと思っている。遺族を探して居住区に入りこもうとしている。そんな奴らに増殖されては困るんだ!」
 クグチは後ずさった。これ以上見ていたくはなかった。早川の指示を待たずに、玄関から家を出た。そこかしこで仲間たちが守護天使を探す声がイヤホンから聞こえる。門扉を出、そして、対象の守護天使がいる方角を示す矢印を頼りに走り始めた。
「くそ! ちょこまかちょこまかと」
 視界に、抹消対象の守護天使の容姿が投射された。自分と同じくらいの歳の、若い女だった。
 やればやるほどわかってくる。老人たちにとって、守護天使が何なのか。
 クグチはやっと思い出した。
 あんな言い方をしなきゃ同じことをしやがるのさ。
 早川はそう答えたのだった。
 優しく言おうがきつく言おうが、俺たちのやることは変わりゃしないんだ。だったらもう二度と守護天使なんざ使おうって気にさせない方が親切ってもんだ。わかるか?
「こっちだ! 一緒に来い!」
 サバンナを映す家の角から仲間が顔を出して叫び、引っこむ。その後ろ姿を追う。先行する仲間の背中が視界の先で次々と角を曲がる。
 裏道に入りこみ、階段が現れた。
 階段を登りつめた先のテラスに、白い服の少女が立っていた。
 クグチにはそれが誰だかわかった。こちらを見下ろしている。
 仲間たちが一人、二人、少女の横を通り過ぎ、その先の下りの坂道を突き進んでゆく。
 息を切らして階段を上りきった。
「何をしているんだ」
 苛立った声をぶつけられても、少女は上目遣いにクグチを見、いたずらっぽく笑うばかりだった。
「幽霊狩りを見るのがそんなに楽しいのか?」
「楽しくないわ」少女は、昼に出会った時と同じ冷淡な声を放った。「私も幽霊だもの」
『また見失った!』
 耳の中で仲間が叫んでいる。
『そっちに行ったぞ、明日宮! 迎え撃て!』
「幽霊?」
 クグチは呟き返す。
『えっ、何? 何て言った?』
「今なんて言った?」
『それはこっちのセリフだ、おい!』
「私はハツセリ。幽霊なの。死んだ場所を探しているの」
 思わず指を伸ばした。
 少女は逃げなかった。袖口のフリルに触れた。眼鏡を外した。依然として存在している。
「悪趣味な冗談はやめろ!」
 すぐにまた眼鏡をかけた。
 眼前に色彩が現れた。一瞬で人間の形になった。
「ねえ」
 UC銃を抜いた。引き返してきた仲間もUC銃を構えた。
 空気が水のように重くなる。
「よければ、私があなたの守護天使になってあげようか」
 幻聴のように、遠く聞こえた。
 守護天使の女が首をよじってクグチがいる方向を見た。
 その守護天使はクグチのことも、UC銃も見なかった。特殊警備員の姿も見なかった。その視線は切実な光を宿し、クグチの顔の
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