暁 〜小説投稿サイト〜
Magic flare(マジック・フレア)
第1話 本当ハ静カナ町
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「ACJ南紀支社特殊警備センターの早川と申します。利用規約第五章第二十一条に基き小島モトコ様へのサービス提供を強制停止させていただきます」
 言うが早いか、硬直する老婆を腕で押しのけて、早川が土足のまま家にあがりこんだ。同僚たちが続いた。
「待って」老婆は早川を追い、二の腕を掴んだ。「待ってください。何かの間違いです」その横を特殊警備員たちがすり抜けて、戸という戸、襖という襖を開け放ち、足跡を刻みつけ、二階に踏みこみ、どすどすという足音を天井から響かせた。
「お察しでないはずはないとは思いますが、あなたの守護天使は汚染されました。他の利用者への汚染拡大を防ぐためあなたの守護天使は消去されなければなりません」
「嘘よ」
 二階から、いたぞ! と聞こえた。早川が足を踏み出す。老婆はその腕を抱きしめるように縋りつき、足止めした。
 逃げたぞ! と二階の声が叫んだ。
 老婆が腕を振り上げ、その皺だらけの、肉付きの薄い手で、早川の胸を叩き始めた。クグチは老婆の後ろからその手首を掴んだ。きつく掴めば親指と人差し指が触れあう細さだった。老婆はわっと泣き、叫んだ。
「人でなし!」
「人でないのは私たちではありません。諦めてください。あなたも昔は守護天使なしで生活していたのでしょう」
 目の前にいる早川の声が、イヤホンからも聞こえる。
「対象は俺と明日宮で確保している。早く探しに行け!」
 足音が、階段を踏み鳴らし、勝手口から飛び出ていく。老婆はもがきながらまだ、早川の二の腕を握りしめて放さない。
「あなたのあれは幽霊です」
 もがく老婆を、早川がなだめすかしにかかった。
「小島さん、あなたは持ち主を亡くした守護天使がどうなるかご存知ですか」
「守護天使は生涯を持ち主と共にするわ」
 老婆は肩で涙を拭い、早川を睨んだ。
「持ち主のレンズと共に埋葬される」
「ここはひとつ、身も蓋もない言い方をしましょう。持ち主は棺の中に遺品としてレンズを入れ、共に火葬されることを許されている。守護天使は登録抹消されます。管轄支社のサーバから永遠に」
 老婆の手首がぴくりと力んだ。
「ところが先の戦争で亡くなった方々には、そのような葬儀や登録抹消作業を行う余裕などなかった。なにせ万単位の人々が一瞬で蒸発したり、焼け焦げたり、または未だに行方不明だ」
 力んだ手が震えだす。老いた体ごと。今度はその体の芯から力が抜けていくのが伝わってきた。
「その結果が外界の様です。消されなければならなかった守護天使たちは、居住区の外の、磁気嵐の中で生きている。持ち主の鮮明な死の記憶と共に」
 老婆が床に座りこんだ。クグチは手を離した。
「あの廃電磁体たちはさながら電子の幽霊です。焼きつけられた死の瞬間の恐怖の鮮明さと強烈さゆえに、元の持ち主と仮想人格としての自己と
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