暁 〜小説投稿サイト〜
Magic flare(マジック・フレア)
第1話 本当ハ静カナ町
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守護天使は自分自身だ」
 可塑性のある知性と性格を持つ電磁体。ACJ社の最高傑作。持ち主は特殊なレンズやイヤホンという外付けの装置を身につけることによって、その電磁体を都市の巨大サーバから自由に呼び出し、会話することができる。
「これにはもともと何の知性もなければ性格もない。そうしたものはこれと会話し、飾りつけ、自分や他人と知識を共有することで形成される」
 守護天使は持ち主の職業や勤務会社、学業成績、他人との交流度、口から発せられる単語の意味の善し悪しやその割合、笑う回数、顔をしかめる回数、配偶者や子供の有無、等の様々な要素で幸福指数を割り出す。
 後見人であり育て親でもある男の言によれば、どの居住区でも、まともな市民なら守護天使を持っている。
「仕事の間はこの眼鏡を使え。守護天使でも何でも、ACJ社が提供する電磁体を見ることができる」
 なので、クグチはまともな市民ではないことになる。

『市民のみなさま、つい先ほど入ったニュースです! 本日六時五十一分頃、太陽活動観測衛星〈みらい〉の打ち上げ基地を有する第十一防衛海域にQ国の巡視船が侵入したことが判明しました』
 無線イヤホンをつけるなり、スカイパネルが喚き散らすニュースが耳から脳に流れこんできた。
『Q国の巡視船はその後二度にわたって同海域への侵犯を試み、海上では依然として睨みあいの状態が続いております。この挑発的な行為に海上自衛軍は――』
「何のご用ですか」
 老人は恐怖に顔をこわばらせながら、見かけばかりの怒りを声にまとわせた。同僚が聞き飽きた言葉で応じた。
「ご存知かと思いますが、あなたの守護天使は外界の廃電磁体に汚染されています」
 何をするんですか。何ですかあなたたちは。廊下で老女の声が叫んでいる。帰って。帰ってください。玄関から靴音が来る。土足で上がりこんだ早川がものも言わずに、UC銃を抜いて子供に向けた。UC銃は人体には無害だが、電磁体をその一撃で完全に消去する機能を持つ。
「待って!」
 妻は叫び、夫は早川の正面に立ち、その両肩を掴んだ。
「どういうことだ、やめろ。出て行け! 何の権限があって」
「ACJ本社が定める利用規約第五章第二十一条に基き、本日を以って大里シヨウ様へのサービスの提供を停止させていただきます。弊社では〈守護天使〉を主とする電磁体育成サービスをご利用いただくにあたり、利用者にて解決できない問題が発生した場合は弊社の特殊警備センターにてサービスの強制停止を実行し、利用者はそれに同意するものとしております」
「問題だと。どんな問題があると言うんだ」
「そちらの星川から説明があったと思いますが、あなたの守護天使は汚染されました。原因としてACJ社が定める電磁体安全利用圏外にて守護天使の呼び出しを行った、あるいはそれを利用したことなど
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