幽鬼の支配者編
EP.27 最後の幕上げ
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士《ドラゴンスレイヤー》・“鉄竜”のガジルが、目的の一つ――ルーシィの身柄の確保に成功した事で一応溜飲を下げる。
そして、絶望を染み渡らせるために、侮蔑の意味を込めてわざわざ間延びした声を、終わりの見えない防衛戦を繰り広げる妖精の尻尾の魔導士達に浴びせたのだ。
【我々の目的はあと一つ……貴様等の皆殺しだ、妖精の尻尾】
そしてねっとりと絡みつくような声から一変、ジョゼが冷たく殲滅を宣言すると同時にパチンと指を鳴らす。
……たったそれだけで、何とか均衡を保っていた戦況に変化が訪れた。
「な……!?」
「急にコイツ等……!」
「強くなりやがった!?」
「グアッ!」
妖精の尻尾のギルド前広場で戦っていた魔導士は突然の事態に驚愕した。
怪我人の多い中、何とか戦えていた“幽兵”一体一体の戦闘力が、絶望的にまでに増幅したのだ。
ジョゼから送られた魔力で強化した腕力で殴られる者や、蹴り飛ばされる者、組み付かれる者に、その手に持った魔力の刃で切り掛かられる者……痛みも恐怖も感じる事無く、戦うためだけに作られた亡霊たちは数と力に任せて突っ込んでくる。
必死に抗い続けるも、妖精の尻尾は一気に劣勢に立たされてしまうのだった。
「ククク……いつ見ても、弱者が強者に痛めつけられるのを見るのは痛快ですねぇ。今まで何とか戦えていた“幽兵”たちが、実は半分も力を出していなかったと知って……奴らはどんな気持ちでしょうねぇ」
魔導巨人の司令室でその様を観賞していたジョゼは、僅かな戦力で“幽兵”を押し返し、ギルドを守ろうとする妖精の尻尾の魔導士の、無駄にしか見えないような足掻きを見て、愉悦に顔を綻ばせる。
無限にも等しい数と、なにより上乗せされた自分の魔力を兼ね備えた“幽兵”たちが、砂で出来た城を一息に崩さず、だが確実に、少しずつ崩していくかのように妖精たちの戦意を絶望で灰色に塗りつぶしていく。
目障りで気に入らないギルドが少しずつ崩れ、搾りかすのような勇気が幽鬼に飲み込まれていくさまは、ジョゼにはこれ以上無い程に快感だった。
「ガジルさん、ルーシィを見張っておいてください」
「ん?」
このまま、今まで観たどんな歌劇よりも興奮させてくれるこの見世物を心ゆくまで堪能したい――そんな歪んだ願望を持っていたジョゼだったが、一旦それに蓋をしてガジルに一声掛けると、聖十の正装を翻して歩き出す。
「愚かにも、私に挑もうとするお馬鹿さんがギルドの中にいるようで……相手しない訳にもいかないでしょう」
「マスター自ら潰さなきゃいけないほどの者なんですかい?」
「さあね? でも、奇跡は起こらないから奇跡なのだと――思い上がった者たちに
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