第三章
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第三章
「それがいい仕事をするコツだが」
「この場合は」
「もう幾つも読んでおられますか」
「既に」
「そして出たベストの結論をだ」
会社員というよりも軍隊の参謀と言うべき口調になっていた。
「今実行に移すとしよう」
「ベストをですか」
「今から」
「あの二人が一緒になるのはいいことだ」
部長は言った。
「相思相愛のカップルは一緒になるべきだ」
「だからですね」
「それで」
「そうだ。幸せな結婚は見ているこちらの気分もよくさせてくれる」
部長はまた言った。
「だからだ」
「じゃあ御願いします」
「それで」
こうしてであった。彼等の方針はこれで決まった。和樹は部長に呼ばれてだ。その部長の口からこう告げられるのであった。
「君にはお見合いをしてもらう」
「お見合いですか」
「いいか?」
「それは」
まずは返答に窮するのであった。どうしてもであった。
「いいね」
「はい」
しかし結局は頷くのだ。それしかなかった。
「それでは」
「頼んだぞ。それではだ」
「わかりました。では」
「話はこれで決まりだな」
部長は落ち着いた顔で述べた。
「よし、それではだ」
「はい、では」
和樹は内心思うところがあったがそれでもだった。彼はそれに従いお見合いに向かうことになった。そしてひとみもであった。
「私がですか」
「ああ、いいな」
こう社長に告げられたのだ。その叔父でもある彼からだ。
「それで」
「あの、社長」
「受けるだけ受けてくれ」
断ることは許されなかった。
「それでいいな」
「わかりました」
社長、しかも叔父の命令なら仕方がなかった。どうしてもであった。
「それでは」
「相手もいい人だ」
社長はあえて相手のことは言わないのであった。
「まあ受けてもそれで困ることはない」
「困りませんか」
「絶対にいいことになる」
こう言ってであった。ひとみもお見合いを受けることにしたのだった。いい振袖を選んでそれを着てだ。お見合いの場のホテルに向かう。
同席するのは社長だった。彼はその姪でもある己の秘書を見て言うのであった。
「ふむ、これは」
「何か?」
「いや、いつもよりもいいな」
彼女を見ての言葉であった。
「さらにな」
「そうでしょうか」
「うん、美人だ」
まさしくそうだというのである。
「それなら彼も快諾してくれるな」
「彼?」
ひとみは鋭い。すぐにその言葉に反応したのであった。
「といいますと」
「ああ、何でもない」
その黒髪を奇麗にすいて品のいい化粧をし赤地にみらびやかな様々な色を配した絹の着物を着た彼女への言葉である。
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