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第二章

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第二章

「そう仰ってたわ」
「じゃあもう決まり?」
「社長まで御存知なら」
「これで」
「しかもいいカップルじゃない」
 こうした言葉も出されるのだった。
「美男美女だし」
「二人共仕事できるし」
「おまけに性格もいいし」
 二人共なのであった。
「じゃあいいじゃない」
「そうよね。後は二人次第」
「そういうことよね」
 こう話されるのであった。
「問題はね」
「肝心の二人がねえ」
「あんなのだと」
「どうかしら」
 それであった。その二人が中々動かない。だから周りもやきもきしていた。
 そして和樹の所属する海外事業部でもだ。彼について話をしていた。丁度彼を秘書課に送ってからだ。そのうえでの話であった。
「今回はどうかな」
「どうせ駄目なんじゃないですか?」
「斉藤さん仕事には大胆ですけれど」
「間宮さんには凄い奥手だから」
「そうですよね」
「しかしなあ」
 ここで部長の席に座る初老の男が腕を組みながら述べた。端整なイタリアのスーツが実によく似合っている。その彼が言うのである。
「あの二人相思相愛だからな」
「もう社長も御存知でしたよね」
「その間宮さんの叔父さんも」
「社長どころか」
 それどころかというのだ。
「副社長も専務も常務も御存知だよ」
「それで部長も」
「勿論僕達もですよね」
 実務的なオフィスにはいささか場違いな話が為されていた。
「もう皆知ってるのに」
「相思相愛なのは」
「それでも動かないんですからね」
「しかも両方」
 話は大体秘書課で行われているものと同じであった。
「やれやれ。一歩踏み出すだけでいいのに」
「どうしたものやら」
「全く」
「一応な」
 ここで部長はまた話してきた。
「二人をどうするかは社長も考えておられるらしい」
「自分の姪のことですしね」
「それも当然ですよね」
「斉藤はいい社員だしな」
 これも大いに認められることであった。
「それならな。やっぱりな」
「そうですよね。一緒になったら凄くいいですよね」
「どう考えても」
「しかし。お互いが動かない」
 部長もまたそれを問題としていた。
「どうしたものかな」
「部長、何かいいアイディアありますか?」
「ここは何か」
「あります?」
「とりあえず社長にお話してみるか」
 冷静な顔で考えながら述べたのであった。
「ここはな」
「じゃあやっぱり」
「何か考えてるんですね」
「相手の先を幾つも読んでそのうえで想定する」
 部長は声を鋭くさせて言った。

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