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サインペン
第四章

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「全然違いますね」
「目についてな」
「それで心に残って」
「これまで以上に覚えられてる」 
 そうなっていることをだ、悠来は愛生に話す。
「いいことだ」
「そうですか。そういえば」
「そういえば?」
「ヒトラーもスターリンもです」
 その独裁者達は、というのだ。
「物凄く記憶力がよかったそうですよ」
「頭は悪くなかったらしいな」
「はい、どちらも」
「仮にも独裁者になるからにはな」
「頭が悪いと駄目ですね」
「馬鹿な独裁者はすぐにやられるさ」
 自分自身がだ、権力の座は座ることもそこに居続けることも難しい。その座を守るには愚かでは務まらない。
「誰かにな」
「ですよね、ですから」
「実際二人共頭は抜群によかったな」
「いいか悪いかは別にして」
「二人共頭はよくて」
「記憶力も凄かったらしいですよ」
「ヒトラーは一度聞いたことも忘れなかったらしいな」
 ここでこんなこともだ、悠来は話した。君の報告は三週間前と変わらないではないかと部下を怒ったという話がある程だ。
「それでスターリンも」
「記憶力がよかったらしいですね」
「それはな」
「色鉛筆のせいだったかも知れないですね」
「そうかもな、色が違うとな」
 それだけでだとだ、また言う悠来だった。
「受ける印象が違って」
「覚えられますね」
「普通に黒だけで書いておいて見る以上にな」
「そういうことですね」
「それじゃあな」
「これからですね」
「俺もそうするよ」
 用途に応じてだ、サインペンの色を使い分けるというのだ。
「これからな」
「そうですか、何か私いいことを言ったみたいですね」
「愛生ちゃんのことも書いてあるから」
 彼女のこともというのだ。
「青でな」
「人の名前だからですね」
「ああ、そうしてるからな」
「私は青ですか」
「嫌かい?」
「いえ、青は嫌いな色じゃないですから」
 それでとだ、愛生は悠来に笑って返した。
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