第四章
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第四章
「いや、いい名前じゃ」
「そうね。猫の名前にいいわよね」
「何でそこで猫なのじゃ」
「あれ、また一匹貰うって言ってなかったかしら」
「今聞いたぞ」
本当に初耳だった。その老いた目を思わず動かしてしまった。
「そんなことは」
「けれど本当よ」
しかし娘はこう言うのである。
「それはね」
「もう一匹か」
「女の子なのよ」
その猫の性別のことも話されるのだった。
「だから奈々っていい名前よね」
「人間の名前なんじゃが」
「けれど猫の名前にもいいじゃない」
それも言う彼女だった。
「そうでしょ?だからね」
「いいのか」
「そうよ。じゃあそれで決めたわ」
父のことをよそに決めてしまったのであった。
「奈々ね。いい名前ね」
「全く。妙なことになったのう」
「全然妙じゃないわよ」
しかし娘はぼやく父にこう告げた。
「全然ね」
「そうかのう」
「そうよ。それにお父さんも別に悪い気はしないでしょ」
「まあそれはな」
言われるとその通りの力也だった。
「猫も好きじゃからのう」
「じゃあいいじゃない」
そういうことにしてしまおうという娘だった。
「それでね」
「しかしその名前は」
名前についてはまだ言う彼だった。
「ちょっと止めた方がいいじゃろ」
「何でなの?」
「いや、それはじゃな」
そう問われると少し困ってしまうのだった。まさかあの娘のことを言うわけにもいかない。だからどうしても困ってしまうのだった。
「まああれじゃよ」
「あれって?」
「人の名前じゃからな」
「猫にも多い名前じゃない」
しかし娘はそんな事情を知らないのでこう返すのだった。
「だからいいじゃない」
「ううむ。どうしてもか」
「女の子だしいいのよ」
また言う娘だった。
「それでね」
「そうか。まあそこまで言うのならな」
納得するしかない彼だった。言える事情でもなかったからだ。それで今はただ紅茶を飲むだけだった。紅茶を飲みながら手元にあった雑誌を読むとだった。
「ふうむ」
「どうしたの?」
「いや、面白いことが書いてあったぞ」
「面白いことって?」
「いや、猫のことじゃがな」
実際に猫のことだった。それを読むと猫のつがいを貰った時に人の恋人同士の名前をつけるとそれでいいことがあるというのである。そのいいこととは。
「実際の人のカップルの名前を付けるとじゃ」
「人の名前を?」
それを聞きながらも服を畳んでいる娘だった。主婦も何かと忙しいのである。
「そうじゃ。彼氏と彼女のじゃな」
「そうしたらどうなるの?」
「何でもそのカップルは何時までも幸せになってそしてその猫のつがいもお互いに長生きするそうじゃ」
「いいこと尽くめじゃない、それって」
「
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