第五章
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「それでね」
「何かわからない場所ですね」
「本当にそうだね」
「何かね」
ここでこうも言うのだった、ロートも。
「ここにいると」
「妙に」
「うん、落ち着くものがあるね」
「不思議ですよね」
「それにね」
ロートは周囲を見回した、ここで。見れば蛍光灯で照らされたこの地下も色々な人が行き交い店の中で楽しんでいる、それを見てだ。
ロートはだ、リンデンにこうも言った。
「平和ではあるね」
「そうですね」
「警察もいない筈なのに」
「治安を守る人達が」
「それでもですね」
治安もだというのだ。
「不思議とあるみたいですね」
「賑やかだけれど喧騒はね」
それもだった。
「なくてね」
「そこも不思議ですね」
「全くです、ただ」
「ただ?」
「こうした場所でも」
雑然、いや混沌としたこの街でもだというのだ。
「やっぱり顔役の人はいますよね」
「そうだね、そうした人がね」
「神父さんなりが」
「そういえば教会もね」
「仏教の寺院もありましたね」
その仏教もだった。
「日本のものやタイのものもあって」
「道教の道観もあってね」
「様々な宗教の施設もありますね」
見れば二人が今いる場所のすぐ傍に日本の仏教の寺があった、僧衣を着ている僧侶が隣のロマニの老婆と談笑している。
その僧侶を見てだ、リンデンはロートに言った。
「あの人にお聞きしますか」
「仏教のお坊さんにだね」
「はい、そうしますか」
「それではね」
二人はペットショップから離れてだ、そうして僧侶にこの街の顔役は誰かと聞いた。すると僧侶はというと。
二人に声をかけられた時点でロマニの老婆との話を中断してだった、そうしてそのうえで二人にこう答えた。
「それならですね」
「はい、どの方でしょうか」
「場所を言ってもわからないですから」
それで、というのだ。
「今からここに来てもらいますね」
「この街の顔役の人をですね」
「はい、この街に来られたのははじめてですよね」
「はい」
その通りだとだ、ロートは僧侶に答えた。
「そうです」
「それならこの街の場所はわからないですから」
「かなり入り組んでいますね」
「ははは、ここはそうですよ」
まさにというのだ、僧侶も。
「そうした場所ですから」
「ですね、噂通りいえ」
ロートは言いながら自分の言葉を訂正させた。
「噂以上です」
「そうでしょうね」
「何処に何があるのか。どなたがおられるのか」
「全くわからないですね」
「建物に地下もですから」
当然地表もだ。
「様々に入り組んでいて様々な人や動物が行き来していて暮らしていて」
「わからない場所ですね」
「かなり」
僧侶と話すロートだったが彼の足元では猫達が遊んで
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