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お姉ちゃんになる
第三章

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「あの時は」
「それで私達のところに飛んで来たわね」
「あの時も文字通りね」
「それで私達に何やってるのって大騒ぎして」
「全く、後にも先にもあれだけ驚いたことはなかったわ」
 衣吹はこのことを苦笑いと共にだ、愛に言った。
「まさかって思ったから」
「私もよ、衣吹とばったり会ってね」
「お互いね」
「そうそう、私はあっていう顔になって」
「お互いその場で大騒ぎして」
「大変だったわね」
 二人でだ、その時のことを笑って話すのだった。
「いや、本当にね」
「あの時は驚いたけれど」
「それからもね」
「色々あったけれど」
 それでもだったのだ、愛と彼の中は進展していった。
 愛は顔を少し上にやって遠くを見る目になってだ、微笑んで言った。
「ここまで来たわね」
「結婚ね」
「私ずっとお嫁さんになるのが夢だったのよ」
「それは誰でもでしょ」
 女の子なら、と言う衣吹だった。
「女の子は誰でもお嫁さんになりたいわよ」
「憧れよね」
「もう絶対のね」
「そうよね、お嫁さんになるのね、私」
「あらためておめでとう、愛」
 衣吹は愛に微笑んでこう言った。
「これからよね」
「あっ、お嫁さんになって終わりじゃなくて」
「うちの兄貴とずっとね」
「幸せになっていかないとね」
「そう、駄目だから」
 こう愛に言うのだった。
「頑張ってね」
「そうするわね」
「それであと少しでね」
 楽しみでそれでいて微妙なものもある、そうした複雑な笑顔になってだ。衣吹は愛に対してまたこう言ったのだった。
「私あんたのこともうね」
「愛って呼ばなくて」
「別の呼び名で呼ぶことになるわね」
「本当にもう少しよね」
「それでこれからはずっとね」
 そのだ、あと少しで訪れるその時を境にしてというのだ。
「私あんたをその呼び方で呼ぶのね」
「そうなるのね」
「あんたも私をもうね」
「そうよね、名前で呼んだらね」
 これまでの様にだ、そうすればというのだ。
「まずいからね」
「だからよね」
「もう呼ばないから」
 名前では、というのだ。
「そうするわね」
「お互いそうなるわね」
「けれどね」
 名前で呼び合うことはなくなる、だがそれでもだとだ。愛は衣吹を見てだ。そのうえで彼女に対して言った。
「これからもね、私達は」
「そう、友達よね」
「普通の友達じゃないけれど」
「それでもね」
「一緒だから」
 それでだというのだ。
「私達はこのままね」
「ずっと友達でいよう」
 こうしたことも話すのだった、そしてだった。
 二人で結婚式の用意をしてだった、衣吹がその愛の手を引いてだ。
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