第一章
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アテネ
ある街のことでだ、アテナとポセイドンはオリンポスの中で言い合っていた。まずはポセイドンが目を怒らせてこう言った。
「あの街はわしが守護する」
「まだそう言われますか」
アテネも目を怒らせてポセイドンに返す。
「叔父上は」
「そうだ、あの街は海に近い」
海神、海の神々の長としての言葉だ。彼はオリンポスにも顔を出しているが海界の神々の長として天界の神々の長ゼウスと並ぶ存在なのだ。
「だからだ」
「叔父上が街を守護されると」
「海はわしの世界だ」
こうも言うポセイドンだった。
「ならばそれしかあるまい」
「いえ、それは違います」
アテナは胸を張って言う叔父にはっきりと反論した。
「叔父上のお言葉は間違っています」
「まだ誰も決めていないからか」
「そもそもヘレネスの地は何処も海に近いではないですか」
その論理でいくと、というのだ。
「ならばヘレネスの世界は全て叔父上のものになります」
「だから違うというのか」
「地上はどの神の専有物でもありません」
このことをだ、アテナはポセイドンに強く言い返した。
「叔父上は海、そしてハーデス叔父上が冥界であり」
「そしてというのだな」
「天界はお父様のものです」
即ちアテナの父にしてポセイドンの兄弟であるゼウスのものとだというのだ。
「しかし地上はです」
「どの神も支配する場ではないというのか」
「はい、ですから」
「無条件でわしのものとはしないか」
「あの街についても」
そうだとだ、やはり一歩も退かずに言うアテナだった。
「同じです」
「それでわしにあの街を渡さないというのか」
「あの街の人間達は学問を尊んでいます」
アテナはここで自身が学問を司ることを話に出した。
「それならばです」
「そなたの街にすべきか」
「必ず」
そうあるべきだというのだ、アテナはアテナで。
「ですから」
「あの街は私が守護しさらなる学問を与えます」
「馬鹿な、学問で富が得られるか」
「学問は最高の富です」
「富は海にこそあるのだ」
彼の支配するその場にだ、最も豊かな富があるというのだ。
「あの街はわしによりその富を与えられ栄えるのだ」
「私が守護をしてそうして学問という最高の富を得て栄えるのです」
両神はお互い一歩も引かず言い合う、しかし。
その両者を見てだ、このままでは何時までも争いが終わらないと見た天界の主神でありオリンポスの主でもあるゼウスが彼等にこう言った。
「では街の人間達に選ばせようではないか」
「人間にですか」
「街の人間達にか」
「そうだ、アテネか我が兄弟か」
即ちアテナかポセイドンか、というのだ。
「どちらを自分達の守護神とするかな」
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