第二章
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「素晴らしいものに満ちています」
「そうか、それは何よりだ」
義隆は左右にいる自分が今傍に置いている小姓達をちらりと見ながらザビエルに応えた。
「ではこれからも布教を続けるのだ」
「そうさせてもらいます、それでなのですが」
ここでだ、ザビエルも他の者達の顔もだった。
それまでの感謝している顔からだ、急に顰めさせられて言うのだった。
「この国は確かに素晴らしい国なのですが」
「なのですが、とは」
「はい、恐ろしい悪徳も蔓延っています」
ザビエルはその顔で義隆に言った。
「これ以上はないまでの悪徳が」
「何だ、それは」
悪徳が蔓延っていると聞いてはだった、義隆も安穏とはしていられなかった。それで顔を強張らせてザビエルに問うた。
「悪徳とは、言ってみてくれ」
「領主様はその悪徳を消して頂けますか」
「無論だ、何だそれは」
「では領主様ご自身がまずあらためて下さい」
ザビエルは真剣な顔で義隆自身にも言った。
「是非共」
「わしがか」
「はい、領主様ご自身がです」
ザビエルはまた義隆に言った。
「そうして下さい」
「確かにわしは大名として戦もしてきて罪人の首を刎ねさせてきた」
義隆はここで己の罪を振り返った、人は誰でもそうだが彼もまた罪を犯してきた。そのことを振り返ったのだ。
「神仏の教えに反することもしてきたが」
「人を殺めることと同じだけの悪です」
「盗みか。しかしわしは」
盗みをしたことはない、義隆は幼い頃からの己を振り返ったがやはりそれはなかった。
「それはない、嘘を言ったことはあっても」
「嘘よりもです」
「その悪徳は罪が深いのか」
「左様です」
「では何だ、一体」
真剣にだ、義隆は考えて言った。
「その悪徳は」
「男と褥を共にすることです」
ザビエルはここでその悪徳を義隆に話した。
「そのことがです」
「男とか」
「領主様、貴方もそうではありませんか」
ザビエルの口調はいよいよ強くなってきていた、そのうえでの言葉だった。
「今も少年達を傍に侍らし夜は」
「当然のことだ」
義隆はザビエルの言葉の意味がわからずこう彼に返した、目を瞬かせつつ。
「それは」
「当然だと言われますか」
「そうだ、おなごと褥を共にすることも」
男とそれをすることも、というのだ。
「どちらもな」
「それが違うのです」
「そうなのか」
「そうです、それは神の御教えに反します」
完全に、というのだ。
「ですから」
「わしに男と寝ることを止めよというのか」
「そうです」
はっきりとだ、ザビエルは義隆に言い切った。
「貴方のその罪は地獄に落ちます」
「地獄とな」
「そして永遠に裁かれます、しかし」
それでもと言うザビエルだった。
「今
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