第10話〜とある美術部員の一日〜
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何やら物凄い剣幕でサラ教官に抗議を申し立てているようだ。つまるところ、取り込み中の様なので一同は頷きあい、僅かに離れた場所から見守ることにした。
「どうして私が貴族なんかのいるクラスに入らなきゃいけないんですかっ!?」
(ふむ。以前にも酷似したことがあった気がするが、これを何というのであったか)
(デジャブだよ。マキアスより根が深そうだな・・・さて、前途多難みたいだけど)
(何で私の方を見るのよ?)
(だって・・・なぁ、リィン?)
(そ、そこで俺に話を振られても困るんだが・・・)
(いずれにせよ、入るつもりなら慣れてもらうしかないだろう)
初めて旧校舎に入り、Z組の話をした時に貴族・平民混合というクラス条件に難色を示した生徒がいた。言わずもがな、マキアスであるが。結局、相当お怒り気味の彼女をどう鎮めるつもりなのかと教官の様子を伺っていたが、当人は予想外の事を口にする。
「ふ〜ん、自信が無いのね?」
「・・・今、何て言いました?」
「貴族に劣るほど自信が無いと言うならそれでも構わないわ。
カリキュラムも他のクラスよりはハードだし、今ならまだ間に合うわよ」
「ふ、ふざけないで下さい!!私が貴族に劣る?自信が無い?
好き勝手言って・・・私の力、クラス中に判らせてやるんだから!」
「いい啖呵じゃないの。その調子で頑張ってみなさい・・・勉強もね」
「ぜ、善処はします・・・はっ、じゃなくて!絶対に負けてなんかやりません!!」
(戦闘力に自信はあるけど学力は弱い、か。脳筋タイプだな)
(うーん、さすがに言い過ぎじゃないか?)
(・・・そうだな。俺も、気をつけないと)
怒りを鎮めるどころか煽ってクラスに加入させたのことに恐れ入ったが、去っていく教官を目で暫し追った後、ひとまず今いるメンバーだけでも挨拶をしておくことにした。
「?アンタたちは、もしかして同じクラスの?」
「ああ。リィン・シュバルツァーだ」
「・・・ファミィ・シェアラドールよ」
リィンを筆頭に全員が自己紹介をしたが、アレスやラウラは口調で貴族だと判断したのか、ファミィは彼らに見向きもしない。リィンも二の舞を避けるべく身分を明かした途端、彼とも話さないようになってしまった。固定概念を持つマキアスとは違い、彼女は自ら壁を作っているように感じられる。貴族嫌悪者も背景によって異なり、一枚岩ではないのだろう。貴族・平民の対立がいかに根深いものであるかを再認識し、アレスは一人、日没の近い黄昏の空を仰ぐのだった。
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