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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第四話  燃え上がる夜
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く……強く鳴った。
 
 
 三人の身体がゆっくりと近づいてくる。
 突然の告白に驚き、固まっていた士郎だが、近づいてくる三人に気付き、思い止まらせようと、両手を前に突き出そうとするが。

「ちょっ――ぁ?」



 ――声が……聞こえた。



 それは……心に届く……不思議な声。






 それは厳しさの中に柔らかな優しさが溢れた声……




――あんたは……本当に馬鹿な人……縁もゆかりも無い他人を救うため、自分を省みることがない馬鹿
 損得を考えずに、只々人を救う……それは……どうして? それが……あなたの「夢」だから? それとも……贖罪のため? あの炎が燃え盛る日……あの日、あなたが見捨てた人への贖罪のため……? 
 馬鹿ね……本当に馬鹿ね……泣いてしまうほど……馬鹿……
 
 ねぇ、士郎……あんた……気付いてる?
 あんた……まるで子どもだよ……
 それもとっっても我が侭な子ども
 助けたい、救いたいと声を張り上げている子ども
 『人を救いたい』という言葉で勘違いしてしまいそうになるけど、『人を救いたい』というのも我が侭なんだよ
 止めようとする周囲の人の声に耳を塞ぎ、自分の身体や心が傷付くのを無視してまで思いを押し通す……
 馬鹿ね
 本当に馬鹿。
 他人を救うために自分を捨てるあんたは……ほんと馬鹿

 ……だけど……

 だけど、ね……
 
 私はね、ほっとけないんだよ……子どもを

 特に……自分で自分を捨てちまったあんたみたいな子どもを……ね
 
 だから……離してやんない

 嫌だ嫌だと言っても離してやんない

 あんたの傷付いた心が癒えるまで……
 
 あんたが心がから幸せだと言うまで……

 あんたが笑って死ぬまで……

 

 離してなんかやるもんか……――







 それは、そっと寄り添うように……ささやかだが強い声……





 ――あなたを……遠い人だと思っていました……強く、優しく、気高い……別世界の人だと……

 でも……それは、違いました

 あなたは確かに強く、優しく、気高い人です……だけど、弱い人でもありました……

 人に罵倒されれば傷付く心……

 石を投げつけられれば血を流す身体……

 あなたはただ……零れ落ちそうになる涙の代わりに血を流し……助けを求める声を雄叫びに変えただけ……

 崩れ落ちそうになる膝に力を込め、震える身体であなたは歩んでいく……

 報われない道を……あなたは歩んでいく……


 あなたが涙の代わりに血を流す時……

 あなたが助けを求める代わりに雄叫びを上げた時……

 わたしはあ
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