暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第四話  燃え上がる夜
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いといて……良いワインがあるんだけど……飲まないか?」
「ん? ふむ、ワインか。まあ、一、二杯位なら付き合おう」

 ワインを薦めるロングビルの様子に、一瞬訝しげな顔を向けた士郎だが、すぐに気のせいだと思い直し、ロングビルの誘いに乗る。

「そっ! そうかい……。じゃ、じゃあちょっと待っていな」

 席を立ったロングビルは、部屋の奥にあるタンスからワイングラスを二つ右手に、そして赤いワインが入った瓶を左手に掴むと、テーブルに向かって歩きだした。

「……ほら、中々のものだよ」
「ふむ」

 ワインが注がれたワイングラスを、士郎が興味深そうに眺めていると、いつまでもワインを飲まない士郎の様子に焦れたロングビルが、自分のワイングラスに注がれたワインを勢い良く飲み干し、士郎にワインを飲むよう勧めた。

「っぷは〜……。ほ、ほら、シロウも飲みな」
「ああ、ではいただ――」

 士郎がワイングラスを掴もうとした瞬間、部屋のドアが蹴破られると同時に、ルイズと制服エプロンの格好のままのシエスタが飛び込んできた。








「シロウッ! 無事ッ!」
「シロウさん大丈夫ですかッ!」

 ドアを蹴破り飛び込んできたルイズたちは、そのままの勢いでテーブルに座り、今にもワイングラスに手をかけようとした士郎に詰め寄っていった。

「ルイズ! シエスタ! ど、どうしてここに?」

 突然現れたルイズたちに驚愕の声を上げた士郎に、ルイズたちは息を荒げながらも文句を言い始めた。

「っけふっ、し、しろうっ……こふ、はいはい、っは、おん、なの後を、っ、ついていかない……っ! こ、子ど、もじゃないんだから」
「し、シロウ、さ、ん。っはっは、だい、じょうぶ、ですかっはっはっ……みみ、ちぎれて……ないっは、ですか?」

 息も絶え絶えの様子のルイズたちに、士郎は頬にたらりと一雫汗を流すと、ワイングラスをルイズに差し出した。

「分かった分かった。まずはこれでも飲んで落ち着けルイズ」
「あ、ありが、とう」

 士郎から受け取ったワインを一気に飲み干したルイズは、お礼を言いながらそのワイングラスを士郎に返すと、士郎は返されたワイングラスにワインを再度入れると、それを今度はテーブルに手をついて喘いでいるシエスタに渡した。

「ほら、シエスタも落ち着け」
「あり、ありがと、ございます」

 渡されたワインを、これもまた一気で飲み干したシエスタに苦笑を向けた士郎は、空になったワイングラスを受け取ると、士郎を噛み付くように睨みつけてくるルイズに視線をやった。

「で? そんなに慌ててどうしたんだルイズは?」
「っ! シロウがミス・ロングビルに連れて行かれたってそこのメイドに聞いて飛んできたのよッ!!」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ