第1部 ゼロの使い魔
第4章 伝説
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ミスタ・コルベールはトリステイン魔法学院に奉職して20年、中堅の教師である。
彼の2つ名は『炎蛇のコルベール』。
『火』系統の魔法を得意とするメイジである。
彼は、先日の『春の使い魔召喚』の際に、ルイズの呼び出したウルキオラのことが気にかかっていた。
正確にいうと、ウルキオラの魔力量と左手に現れたルーンのことが気になって仕方がないのであった。
珍しいルーンであった。
それで、先日の夜から図書館にこもりっきりで、書物を調べているのであった。
トリステイン魔法学院の図書館は、食堂のある本塔の中にある。
本棚は驚くほど大きい。
おおよそ30メイルほどの高さの本棚が、壁際に並んでいる様は壮観だ。
それもそのはず、ここには始祖ブリミルがハルケギニアに新天地を築いて以来の歴史が、詰め込まれているのだった。
彼がいるのは、図書館の中の一区画、教師のみが閲覧を許される『フェニアのライブラリー』の中であった。
生徒たちも自由に閲覧できる一般の本棚には、彼の満足いく回答は見つからなかったのである。
『レビテーション』、空中浮遊の呪文を使い、手の届かない書棚までうかび、彼は一心不乱に本を探っていた。
そして、その努力は報われた。
彼は一冊の本の記述に目を留めた。
それは『始祖ブリミルの使い魔たち』が記述された古書であった。
その中に記された一節に彼は目を奪われた。
じっくりとその部分を読みふけるうちに、彼の目が見開いた。
古書の一節と、ウルキオラの左手に現れたルーンのスケッチを見比べる。
彼は、あっ、と声にならない呻きをあげた。
一瞬、『レビテーション』のための集中が途切れ、床に落ちそうになる。
彼は本を抱えると、慌てて床に下りて走り出す。
彼が向かった先は、ウルキオラの事を初めて知った場所…学院長室であった。
学院長室は、本塔の最上階にある。
トリステイン魔法学院の学院長を務めるオスマン氏は、白い口髭と髪をゆらし、重厚なつくりのセコイアのテーブルに肘をついて、退屈を持て余していた。
ぼんやりと鼻毛を抜いていたが、おもむろに「うむ」と呟いて引き出しを引いた。
中から水煙管を取り出した。
すると、部屋の隅に置かれた机に座って書き物をしている秘書のミス・ロングビルが杖を振った。
水煙管が宙を飛び、ミス・ロングビルの手元までやってきた。
つまらなそうにオスマン氏が呟く。
「年寄りの楽しみを取り上げて、楽しいかね?ミス……」
「オールド・オスマン。あなたの健康を管理するのも、わたくしの仕事なのですわ」
オスマン氏は椅子から立ち上がると、理知的な顔立ちが凛々しい
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