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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第31話 神に従う赤い子羊
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愉快そうだが、半ば諦めてもいるようだ。さすがに俺から同盟出身者だとは話していないし、他にも特段自分が同盟出身者ではないと思うよういろいろと気をつけているはずだが……やはり後で黒狐とつながっているのか。ここで席を立てば余計怪しまれると思い、軽くスルーしてみる。

「物好きなのは否定しないよ」
「貴方の帝国公用語、変なところにアクセントがあるからバレバレ。きっとお国の言語教師が下手だったのね。もっとも帝国のド田舎からくるオノボリさんに比べれば、遙かにスマートで聞きやすいけど」

 そう笑いながら、ドミニクはいつものように烏龍茶を傾ける。原作でルビンスキーやルパートと一緒に搭乗するときは必ずと言っていいほどウィスキーとロックアイスが並んでいた。フェザーンの青少年健全育成法にも一六歳未満の飲酒はこれを認めないとある。そして彼女の態や店の規模・品格・備品から言っても、今の彼女が宝石店やクラブの経営者で、貨物船のオーナーとは思えない。

「貴方が来てくれるお陰でようやくダンス教室の月謝が払えるの。これからもご贔屓してくれるとありがたいわ」
「ウチの上司のことだから、来月にはどこにいるのか分からないよ」
「本当にウソが下手ね。航海士のような専門職なら、一月もフェザーンの地上に縛り付けておくなんて、そんな馬鹿な会社があるわけ無いでしょうに」

 俺を見るドミニクの流し目に、危険な物が僅かだが含まれているのは分かる。時折アントニナも同じような目をする。それは決まって『そんなことも分からないほど僕(ちなみにアントニナは僕っ子だ)が馬鹿だと思うのか』と怒っている時だ。俺があえてそれに言葉で応えず、肩を竦めて手を開くと、小さく鼻息をつくドミニクの顔には僅かながら優越感が浮かんでいる。頭がいいと自覚している証拠かも知れない。

「……じゃあ、俺はなんだと?」
「最初は同盟弁務官事務所の駐在武官かとは思ったわ。けれど貴方って若すぎるし、軍人にはとても向いてなさそうだし、何よりウソが下手すぎる。それにあの人達は必要以上に見栄を張って、こういう場所にはこないの。別のクラブで痛い目に遭ったからよく覚えているわ」

 いきなり直球ど真ん中で当てられて、俺の背中にはかなりの量の冷や汗が伝ったが、運良くドミニクは自分で否定してくれた。意外に迷っているのか、グラスから滴る水滴が包む手を伝うくらいになってから続けた。

「同盟系中小商社の研修社員、というところかしら。そうね。会社の幹部、それも最近昇進したばかりの人の息子さんで、近い将来会社経営に参画させたいと親心を持っている。それにかなり上級の幹部からの受けもいい。だけどまだ若いし経験が不足しているから、まずは外の世界を見てこいとばかりにフェザーンに放り出された。そんなところね」

 ……中小商社を同盟軍に変え
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