第四章
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だな」
ゼウスは玉座の上からセレネーに問うた。まずはそれからだった。
「その少年を」
「その通りです」
セレネーは素直にそれを認めた。
「永遠に。一緒にいたいのですが」
「エンディミオンだったか」
ゼウスはその少年の名を知っていた。それをセレネーにも言った。
「確か」
「御存知でしたか」
「うむ」
セレネーに対して答える。
「噂は聞いていた。だがその少年は神の血も一滴も受けてはいない」
「それも知っています」
神の血を受け継ぐ人間は多かった。だが彼はそうではなかったのだ。
「容易に不死になることはできないぞ」
「それはわかっています」
セレネーとて愚かではない。そのことはわかっていた。だがそれでも、あえてここに来たのである。その理由も既にはっきりとしている。
「しかしそれでも私は」
「どうしてもか」
「そうです」
必死な声でゼウスに頼み込む。顔も必死なものであった。
「何があっても。私は彼と共にいたいのです」
「永遠にか」
「はい、永遠に」
セレネーはまた言う。他には何もいらないとさえ思っていた。
「彼と。なりませんか」
「結論から言う」
ゼウスはセレネーの心を受けた。彼は気紛れであり好色であったが決して邪悪な神ではない。だからこそ彼女のその真摯な気持ちを無碍にはできなかった。だからこそこう言ったのである。
「それはできる」
「まことですか?」
その言葉を聞いたセレネーの顔が急に晴れやかになる。救われた、心からそう思った。
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