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相棒は妹
志乃「番外編って言っても別に大したことないけどね」
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ゅう話よ。聞きたいのはそれだけかい?」

 「あ、ああ、それだけ。邪魔してごめん」

*****

 ……これが俺と祖母の会話だ。つまり犯人じゃない。よくよく考えてみると、エロ動画をばあちゃんが見る筈ないもんな。いやー、これ時間の無駄だった。やっぱり俺も根底ではかなり焦っているのかもしれない。カラーボックスだけを愛するあの人を犯人リストに入れる意味なんて考えるまでもないのに。

 さっきとは違い、今度は自分の冷静さに欠けた行動に苦笑する。そして、脳内で二人の人間を思い浮かべる。

 父さん。そして志乃。残るはこの二人だ。可能性としては……甲乙付け難い。父さんだったらパクって視聴するだろうし、志乃なら俺に対する嫌がらせのために使いそうだ。

 「とりあえず、志乃からかな」

 父さんは仕事で家にいない。なら残るもう一人を次の相手に掲げる他あるまい。

 志乃。俺の妹であり、ピアノ実力者であり、全てにおいて鬼畜野郎な強敵を。

 「……正直、嫌だなぁ」

 ボソッと呟く俺。ついつい本音が言葉になって出てしまった。少し焦って周りを見渡すが、誰かが聞いていた様子はない。ふう、と吐息を漏らしてから、俺は階段を上って志乃の部屋に向かった。段を踏みしめる音が、まるでラスボスの部屋に乗り込んでいるような緊張感を与え、何故か身震いした。俺がこの家族の中で一番苦手としているのはやっぱり志乃なんだな。全く喋っていない間柄だったのに不思議なもんだよ。

 自分の部屋を通り過ぎて二つ先の志乃の部屋に辿り着く。額に滲んでいた汗を手で拭って、息を静かに吐き出す。これから訪ねるのは妹だってのに、俺はどうしてこんなに緊張しているんだろうか。わりとマジで殺されかけたから?だとしたら情けないにも程がある。

 でもここで止まっているのは一番情けない。俺は妹が佇んでいる部屋のドアをコン、コンとノックして相手が姿を現すのを待つ。

 だがしかし、数分間待っても奴は出てこなかった。さすがに変に思ってもう一度拳でドアを軽く叩く。絶対聞こえてる筈なんだよなあ。

……まさか。俺は脳裏に浮かんだ一つの予測を、噛みしめるようにして言葉に出してみた。

 「まさかあいつ、居留守してんのか?」

*****

 その考えは見事に的中していた。いや、当たってても嬉しくなんてないけど。

 俺は一階に行って母さんを招集、志乃の部屋に連れて行って奴を呼んでもらった。すると志乃は手品でも見せるようにいとも簡単にドアを開け「なに、母さん」と無表情で答えたのだ。

 志乃は俺が母さんの隣にいる事に気付き、わずかに嫌そうな顔をした。こいつ、俺以外だと出るのかよ。どんだけ嫌われてんだ俺。カラオケで歌いまくれって命令したのはどこのどいつだってんだ。


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