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横浜事変-the mixing black&white-
ミル・アクスタートは自身の矜持を保つために銃を握る
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なある日、メンバーの一人が唐突に言ったのだ。『じゃあ、俺達も街に溶け込めばいいんじゃないか』と。
次の日から、彼らは駅前を始めとして、許可された場所で小さなライブを開いた。趣味でやっていた時と同じ、黒一色と白一色で分けた特攻服を身に纏い、ヘヴンヴォイスは音楽バンドとして、街への転入者として、横浜に歌を響かせたのだ。
数日後、彼らのライブを見たラジオ関係者がライブ終了後に声を掛けてきた。『君達、もう少しやってみる気にはならないか』という、スカウトの言葉だった。
初めは全員、気が乗らなかった。自分達がこの国に来た理由は街の裏に潜む組織についての情報を知るためであり、表の世界で活躍するのが仕事ではないからだ。
数知れない多くのバンドが聞いたら嫌味にしか聞こえない話だが、ミル達には重要な問題だった。自分達は趣味として、この街への贈り物として演奏していただけなのに、名誉など受け取ってしまって良いのだろうか?彼らは悩み、安定しつつあった日常の変化に戸惑っていた。
しかし、互いに頭を捻り合う中で同僚のルースが素朴な疑問を呟いた。
『長期滞在するなら、金稼がないとヤバいんじゃね?』
その言葉に、メンバーはホテルの一室で凍り付いた。彼らは任務遂行の事ばかり考えていただけに、一番大事な事を忘却のかなたに捨ててしまっていたのだ。
これまではボスが渡した金で過ごしていけた。ホテルの宿泊料も払えたし、食料はコンビニで済ませていた。だが、それがいつまでも続くなんて事はない。
そのときメンバー全員が出した結論は、エゴイズムな殺し屋にも関わらず統一したものだった。
『働こう』
それからの彼らの動きはこれまで以上に迅速的だった。駅前で歌って、スカウトマンと話を付けて、初めて仕事を貰った。初めての仕事は横浜のライブ会場で行われる中規模の生ライブだった。
そこで多くの観客の目を奪ったのが、メンバーの紅一点であり、二度は振り向くほどに美人なミルだった。それに気付いたスカウトマンは『まずはクルミちゃんを好きになってもらおう』と言って、公の場に彼女を連れ出した。
ラジオの生放送のゲストを始め、横浜でのライブの看板となって、どんどんファンを獲得していくミル。時々自分の任務を忘れそうになったが、ホテルに着く度に目に飛び込む銃火器を見て、気が一気に引き締まる。
約半年ほどで、ヘヴンヴォイスは横浜だけでなく、東京などでも注目されるようになり、テレビに出る日も近いのかもしれない。それが表姿のヘヴンヴォイスだ。
――でも、今日でそれらは全部吹き飛ぶ。
ミルの中に、決して音楽バンドとしての毎日が無益だったという気持ちはない。むしろ、これまでの人生が見違える程に晴れやかだった事が、どこか誇ら
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