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横浜事変-the mixing black&white-
赤島は自分が脇役であるにも関わらず、主役と同じ事を考えた
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横浜の裏では有名な殺人組織を思い浮かべ、ゆっくりと舌なめずりする。
――俺は殺す事に生き甲斐を覚えるわけじゃないけど、強い奴と戦うのは好きだ。
――『アイツ』の話では、ヘヴンヴォイスのすぐそばにいるのは八幡と宮条って奴らだっけか。
――片方はナイフ使いで、もう片方は投擲系。まさに俺好みだ。
――ああ、でもヘヴンヴォイスの連中が殺っちまうのかな。じゃあ、俺は他の奴らと戦うか。どっちにしても期待は出来る。
歪んだ欲望に胸を躍らせる要。自分の世界に入り込み過ぎて気付かなかったのだが、すでに周りの殺し屋は自分の得物を手に取っていた。ナイフ、散弾銃、短機関銃など、普通なら持ち得ない物を所持している彼らを見て要は無表情で呟いた。
「……アンタら、そんなのどこから仕入れてんだ」
その低い声を聞き取った隣の男は、チラッと要を見てから再びエレベーターのドアを見据え、淡々と説明した。
「お前は別口だって聞いてるが、ここにいる奴らは京橋会か伊都木会から支給されてんだよ。今回の事だって伝えてある」
「そんな事したら、殺し屋統括情報局にいる『アイツ』に迷惑掛からないか?ヤクザは巻き込まないんだろ?」
「ああ。だが今回の件、京橋会も伊都木会も、それに他の組織にも上手い話じゃねぇか。だから何も言って来ねぇ。俺らの後始末も、手際の良い殺し屋統括情報局に任せて自分らは一切関与しない気満々だからな」
「都合の良い話だな、そりゃ」
「だろ。それに『アイツ』、自分の計画のためにロシアの殺し屋ぐらいなんだからよ。横浜にいる他の組織は首突っ込みたくも無いし、突っ込む気もねぇんだ」
意気揚々と語る男の話に、要は内心少し呆れていた。
――結局、対岸の火事ってわけか。『アイツ』の計画は分かっていても、その真意まではまだ見えてないのに。
――殺し屋統括情報局をどう炒めるのか……気になるな。
要は近い未来に実現するであろうその絵を脳裏に浮かべ、しかしそれをすぐに消去した。そして珍しく顔に感情を乗せて、誰にも聞こえない声で呟いた。
「今は、楽しもう」
ただし、その顔は得物を喰らう蛇のように鋭く、残忍なものだったが。
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