第三章
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第三章
「そうして貴方とここで御会いしたのです」
「そうだったのですか」
「いつもここにおられるのですか?」
セレネーはそうエンディミオンに尋ねた。
「羊飼いをされて」
「ええ、大抵ここにいます」
エンディミオンは正直にそう述べた。
「そうして可愛い羊達の世話をしています」
「そうなのですか」
「はい。貴女はいつも何処におられますか?」
「今まではどうにも居場所を見つけられませんでした」
少し暗い顔を作って言うのだった。そのうえでまた言う。
「けれどこれからは」
「これからは」
「ここにいて宜しいでしょうか」
そう彼に言うのだった。
「貴方さえよければ。どうでしょうか」
「ええ、いいですよ」
エンディミオンはにこりと笑ってセレネーに言う。彼女はそれを聞いて顔を一気に晴れやかにさせるのだった。
「いいのですね、それで」
「はい、貴女が何処にも居場所がないというのなら」
これはエンディミオンの優しさであった。それはセレネーにも伝わった。
「どうかここに」
「わかりました。それでは」
「はい」
こうして二人はそれから昼はいつも草原で二人でいるようになった。それはセレネーにとっては至福の時間であった。昼は彼と会い夜は月と共に彼が眠っているのを見守る。そうして楽しい日々を過ごしたのであった。
そのことはアルテミスにもわかった。それで朝に彼女がエリスに向かおうとする時に彼女に声をかけるのだった。
「今日も楽しそうですね」
「ええ」
セレネーは上機嫌だった。その顔でアルテミスの問いに答えるのだった。
「今。とても幸せよ」
「そうですか。それはいいですね」
アルテミスもそのことを素直に喜ぶのだった。
「恋というのは。いいものなのですね」
「私も。今までは知らなかったけれど」
セレネーは一瞬だけ寂しい顔になった。しかしそれは一瞬であった。
「今は違うわ。毎日がとても楽しいのよ」
「恋は。それ程までに素晴らしいと」
「昼も夜も」
セレネーは言うのであった。
「とても楽しいわ。これが恋なのね」
「恋ですか」
「この世にこんなに楽しいものがあったなんて」
うっとりとした声になっていた。その声から彼女が心から楽しんでいるのがわかる。だがアルテミスはそんな彼女を見てふとあの言葉を思い出すのだった。
「けれどお姉様」
「何かしら」
「私達は月の女神ですよね」
「ええ」
セレネーはアルテミスのその言葉に何を今更といった顔を見せた。
「それがどうかしたのかしら」
「確か私達は」
アルテミスはそのうえで言う、
「その恋が決して実らずに。そして」
また言う。
「悲劇に終わると。その運命だったのでは」
「若しそうだとしてもいいわ」
しかしセレネ
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