暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その伍
[4/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
広場にて。

 青髪の男騎士は今回の戦果であるボス≪イルファング・ザ・コボルドロード≫の情報を誇らしげに報告した。俺達、イロモノアサシンと藍色ナイトは後列の隅で足を伸ばしながらその報告を聞いていた。いや、聞いていたといってもあくまで横耳に挟みながらだ。

 実は今、俺達の手元にはもっと情報としての価値を有する≪アルゴの攻略本・第一層ボス編≫がある。この本を読みながらディアベルの声を聞き流している、というのが最も今の俺を表現するのに適しているだろう。たった三ページしかないこの本(観光パンフレットのほうがページが多そうだ)はページ数の割に驚くほどの情報量だ。裏表紙にはベータ時の情報という分かりやすい一文が書かれている。読んでみれば成程(なるほど)、ボス戦をする上でこの攻略本は間違いなく必須といえよう。

 と言ってもこれを持っているのはこの場では俺とインディゴだけだ。同じ広場の隅で店を広げているNPC露天商に無料で販売――もとい配布しているので、何故みんな貰わないのか。むむむ、まことに不思議である。

――ディアベルの話が終わったら教えるかぁ……。

 不思議も何も、この事を知っている俺達二人があの隅で売られていることを教えていないからだ。ディアベルが折角突入してまで手に入れた情報のあとに攻略本の存在を教えるのが一番自然で、一番良い流れだと俺が判断した。

 その後、特筆するようなことは起きなかった。普通に俺が本の存在を教えて、普通にアルゴの攻略本をみんなで読んで、普通にディアベルがこの本に感謝の言葉を述べた。レイドリーダーのディアベルが感謝した、というのは俺としては望ましい展開だった。
 βテスターとその他大勢が対立する構造は絶対に避けなければならない。キリトとフレンドだから、というような個人的な理由ではなく、攻略を進める上でβの情報は必須なのだ。円滑な攻略のためにもつまらない謝罪要求としょっぱい賠償金のせいでβテスターが更に引き(こも)る事態だけは起こしてはならない。
 情報なんかよりも人材のほうがよっぽど大事だということを、不思議だが誰も知らないらしい。

 そんな中、噛みつくんじゃないかと密かに俺が懸念していたキバオウは、何故かディアベルの言葉に対して反論しなかった。人の話を聞かないような印象を最初は受けたのだが、ひょっとすると議論する能力は有しているのかもしれない。

――そうだったら、なんとかなるな、案外。……少なくとも、この最前線(、、、)では。

 しかし今は前を見るときだ。それこそ、最前線である第一層フロアボスのインファルグを見るとき。その先――遠い未来――を見ることは得策ではない。未来は今の積み重ねから成る。だったら今を全力で戦えば最善の未来に辿り着くはずだ。そうだ、みんなおっかなびっくりだが現状を
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ