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女の子の恋
第二章
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第二章

「どれだけ楽しいかなあ」
 そして自分が由美子と一緒に帰る姿を想像してみた。二人並んで校門を後にして楽しく談笑する。由美子は自分にその優しい笑みを向けるのだ。それを思うだけでどういうわけか急に幸せな気分になれた。そして彼女自身もそれに気付いたのであった。
「何でだろ」 
 幸せな気分になれたのが少し不思議であった。その原因は何なのかまではわかりはしなかったが。
 それから杏奈はとにかく練習に励んだ。練習に練習を重ね、朝も夕方も部活漬けだった。昼は昼でラケットを振る。テニスのことばかり考えていた。
「勉強もしっかりとね」
 そんな彼女に由美子が声をかけてきた。
「スポーツも大事だけれどこっちもね」
「はい」
 明るい声でそれに答えた。
「勉強も頑張ってるつもりです」
「ならいいけれどね」
 この言葉には偽りはなかった。杏奈は勉強の方も頑張っていた。見事なことにそっちでも結果を出していたのである。クラスで五番になる程であった。
「頑張るわね」
 由美子はそれを聞いて素直に感嘆の言葉を述べた。
「スポーツも勉強も」
「先輩みたいになりたいですから」
「私みたいに?」
「はい」
 杏奈は答えた。
「先輩はテニスも勉強も出来ますから。そんな先輩みたいになりたいんです」
「私みたいにって」
 由美子はそれを聞いて顔を赤くさせた。
「私はそんな立派な人間じゃないわよ。見習ってもらうなんて」
「私にとってはそうなんです」
 だが杏奈はここでこう応えた。一点の曇りもない声だった。
「先輩は。目標ですから」
「目標」
「はい」
 少なくともこの時はそう認識していた。杏奈にとって由美子は尊敬すべき先輩であり目標なのだと。だがそうではないと知るのにそれ程長い時間はかからなかった。しかしこの時は彼女も由美子もそれを知ることはなかった。
「先輩みたいになりたいんですから」
「そう、何かそこまで言われると正直恥ずかしいけれど」
 だからといってそれを拒む程由美子も人の心を知らないわけではなかった。
「けれど悪い気はしないわ。頑張ってね」
「はい!」
 杏奈は力強い声で頷いた。それからもやはり来る日も来る日もテニスに明け暮れ、勉学にも力を注いだ。遂には夏の大会で初心者だというのに一年生で選手として選ばれたのであった。
「嘘・・・・・・」
 これには杏奈も流石に驚いた。部室で発表を聞いて時思わず目が点になってしまった。
「私が選ばれるなんて」
「だって杏奈元々フットワークが凄いし」
 同じ一年の仲間達が杏奈に対して言った。
「バスケで鍛えたバネもあるし。選ばれて当然よ」
「そうそう、おまけに練習熱心だしね。やっぱりあんたしかいないっしょ」
「私しかいないって」
「そういうことよ、杉本さん」
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