第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十九話 日は沈み……
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夜の存在は不比等達を驚かせた。彼らの目からしても輝夜から下心は感じず、自分達は初対面だと言っている割には長年の友人の様に言い合いをしていたのだから。
そんな事情もあり暫くの間この屋敷に厄介になる事が決まっていた。輝夜としても行く当ても無く帰る気も無い為渡りに船でもあった。
「お言葉には甘えさせてもらうわ、何時までかは分からないけど」
寝巻に着替え終わり輝夜が着ていた服を畳もうとしていた所で服の中から親指ほどの大きさの小瓶が転がった。瓶は蝋燭の明かりを反射し七色に光り口は厳重に封をされている。
「あら?綺麗な小瓶ね」
妹紅は転がってきた小瓶を拾い上げると蝋燭の明かりで輝く小瓶を繁々と眺め――――輝夜はその小瓶を忌々しげに睨み付けていた。
「――――よければソレ、此処に泊めてもらうお礼にあんたにあげるわ。聞いて驚きなさい、実はソレ『不老不死の薬』なのよ」
小瓶を眺めていた妹紅に輝夜はそんな言葉を吐いた。
彼女が言った事は本当だ。永琳に薬を飲まされ研究所を後にしようとした時に無理やり渡されたのだ。理由を聞くと、
『もし自分の身代わりが欲しくなったらその相手に飲ませて此処に連れてきなさい』
笑顔でそんな事を言う永琳に輝夜は憤りしか感じる事も無く、身代わりなど作れる訳も無い為に今の今まで惰性で持ち歩いていたのだ。
輝夜の言葉を聞いた妹紅は一瞬驚いた表情をした後――――憐れみにも近い視線を輝夜に向けゆっくりと近づくと輝夜の肩をやさしく叩いた。
「……なるほどよく分かったわ――――『不老不死の薬』なんて言われて大金を払ってこんな偽物を掴まされたせいで一家離散してしまったのね。大丈夫よきっと貴女は悪くないわ!」
「……勘違いで憐れまないでくれるかしら?――――まぁいいけど」
憐憫の眼差しを向けられるのは輝夜としては不愉快ではあったのだが別に無理に本物だと信じさせる事も無いと思い反論を押し込めた。
「――――とまぁ冗談は置いといて、瓶自体は綺麗だし有り難く貰っておくわ」
妹紅は小瓶を手の中で弄びながら、
「それに『不老不死の薬』なんて彼方此方の権力者が求めてやまない有るかどうかも分からない秘宝よ?もし本物なら自分で使えばいいじゃない?」
笑いながら冗談で輝夜にそんな事を言ってくる。それを聞いた輝夜は妹紅に気付かれない様に表情に影を落としながら小さく呟いた――――死なない事がそんなに素晴らしい事だというのか?
そんな輝夜の呟きは妹紅には届かず、彼女は瓶を部屋の隅に置いてある台に置くとそのまま布団に移動し横になる。
「ほらもう寝ましょう、明かりは消してね」
「そうね、本当に今日は疲れたわ――――今までの人生の中で一番」
「何言ってるんだか、おや
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