第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十九話 日は沈み……
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は僕に背を向けゆっくりと通りを歩き出すし、そんな彼女の後を僕は何も言わずに追いかける――――その行動はまるでさっき永琳が言った『答えは決まっている』という言葉を肯定しているかのようだ。
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太陽が沈み夜の帳が降りた京の都の通りからは人々が姿を消し各々の自宅に帰り夕餉を取り始める。
その行動に平民も貴族も無く都の多くの民は自宅の居間で蝋燭の明かりに照らされながら家族と共に食事を取り談笑に更けていた。
貴族街の中でも広い敷地を持つ屋敷の一つ――――門には見張りの兵が二人立っており屋敷へ侵入する者が居ないかと鋭く眼光を光らせている。
屋敷の内部を覗けば庭は枯山水風に作られ風情があり住まいである建物も職人の技が見て取れる。
その建物の一室に四人の人物が集まりそれぞれの前に置かれた膳に乗せられた料理を口に運びながら舌鼓を打ち談笑している。
「いや〜妹紅が友人を連れてきた事にも驚いたが、その連れてきた子がこんなにも見目麗しい娘であった事にも驚いたぞ!つい口説いてしまいそうになる!ハ〜ッハハハハッ!」
そう言って笑い声を上げる一人の男。
彼の名は『藤原 不比等(ふじわら ひふと)』、京の都でも有数の貴族の一人であり妹紅の父親。
黒の短髪に黒い口髭を生やし紫色の袖の大きな衣、したは白いゆったりとした袴を穿いており見ただけで良い生地を使っているのがわかる。
服装は気品を感じるのだが少々残念なのが彼自身の体型であった。少し肥満気味でありお腹などは服の上からでも分かるほど出ている。痩せれば中々に男前なのかもしれないが今の状態では妹紅の父だと言っても大半の人間は信用しないだろう。
「あら?旦那様……妻の前で娘と歳が変わらなそうな子を口説くなんて――――いい度胸ではありませんか」
不比等の隣に座っていた女性が不比等を鋭い眼光で射抜きながらそんな言葉を吐くと不比等は笑顔のまま凍り付きぎこちない動きで首を女性の方に回しながら冷や汗を?いている。
女性は不比等の妻で名を『藤原 紅緒(ふじわら べにお)』、腰まである長い黒髪を後頭部で結い上げ、藤色の振袖を身に纏い妙齢の美しさを感じる。
顔立ちは妹紅と非常に似ており妹紅が母親似なのが見てとれた。だが今の彼女の瞳から人らしい暖かさは感じず浮かべている笑顔も何故か寒気を感じさせた。
「ちっ、違うんだ紅緒!そんなつもりで言ったのではなくてだなッ!誤解だ!誤解なのだッ!」
「えぇ分かっていますわ、誤解なのですね?なら誤解を解く為にもちゃんとお話をしなくてはなりませんね。さぁ旦那様――――お話しましょうか!」
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