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復縁
第六章

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第六章

「一緒じゃない」
「美味しいわよね」
「まあそれはね」
「それじゃあそれでいいわね」
 千絵は彼女にさらに言ってきた。
「これで」
「参ったわね」
 言われてまずは溜息を吐き出してしまった。
「こんなことやられたら」
「けれど飲んで美味しいって言ったのは事実よ」
「ええ、わかってるわよ」
 それは認めるのだった。彼女にしてもだ。
「迂闊だったけれどね」
「飲んでみたら美味しいものなのよ」
 そうだともいうのである。
「わかったわね。それじゃあ」
「ええ。そうなのね」
「それによ」
 さらに言う千絵だった。勢いをそのままにである。
「飲み方は人それぞれよ」
「こいつの飲み方も」
「それを認めないと。それも度量よ」
「そういうものなの」
 言われて応えるのだった。
「じゃあ私が怒ってたことって」
「下らないことよ。わかったわね」
「ええ、まあ」
「そういうことだよ」
 茂久も茂久で充に対して言ってきていた。
「なあ、見えるな」
「ああ」
 目の前の光景は、というのだ。それは紛れも無くしっかりと見ていた。
「ちゃんとな」
「じゃあわかるな」
「下らないことだったんだな」
「そうだよ、下らないことだったんだよ」
 言葉は既に過去形になっていた。
「そんなことで喧嘩だの別れたっていうのはな」
「下らないことだったのよ」
 千絵も言ってきた。
「わかったわね。これで」
「ほら、わかったよな」
「だったらね」
 その焼酎を入れた日本酒の大ジョッキをもう一つ持って来た。そちらは充の前に置くのだった。
「それ飲めよ」
「楽しくね」
「ああ、わかったよ」
 最初に応えたのは充だった。
「じゃあ。そうさせてもらうな」
「私も」
 房江は少しばかりふてくされた様な顔になってはいた。しかし彼女も結局頷いたのだった。「そうさせてもらうわ」
「よし、じゃあな」
「仕切りなおしってことで」
 二人が音頭を取る。それと共に杯を手に取りである。
「乾杯だ」
「中直りのね」
「ああ、なあ」
 充もその大ジョッキを手に取りながら房江に対して言ってきた。
「ちょっと言われた位で俺もな」
「私も。こんな何でもないことで」
 二人は申し訳なさそうな顔でお互いに言い合った。
「怒って」
「悪かったな」
「ええ。けれどこれで」
 房江の言葉である。
「仲直りしましょう」
「この酒を飲んでな」
 こう言い合ってそうして乾杯してお互い心ゆくまで飲んだのであった。二人はそれからまた付き合いだした。何ということもない普通に終わった復縁であった。終わってみればそれだけだった。


復縁   完


                 2010・1・9

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