入学編〈下〉
エリカ対紗耶香
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付けられた警棒に構わず、膝をかがめる壬生先輩。俺らは二階で見ていたが、壬生先輩の全力を見せるとか一種の挑発だなと思った。エリカが捨てた脇差を拾い上げたと思ったら、指輪を捨てた先輩だった。どうやらあんなものに頼らずに、エリカの技を打ち破るそうだ。しかも、ブレザーを脱いだ先輩。一高の女子制服はブレザーの下にノースリーブのワンピースである。両腕から肩がむき出しになったのか、壬生先輩は刀を返す。峰打ちは刀の構造を無視した打撃であり、刀を折るというリスクを増やすものでもある。そのリスクを負っても、人を殺すことの躊躇いが、剣尖を鈍らせてしまう事を嫌った。
「あたしには解る。貴女の技は、渡辺先輩と同門のものだわ」
「あたしの技は、あの女のものとは一味違うわよ」
互いに一言ずつ、言葉を交わす二人であった。深雪も俺も、どちらが勝つのかは予想はしていた。まあ沈黙が続いていたけど、緊迫が最高潮に達した瞬間にエリカが消えたように見えたが、これで決まったと思った。刹那の交差、甲高い金属音が響く。視認することも困難ではあるが、俺にはゆっくりと見えた。魔法で加速したエリカの一撃を、壬生先輩は受け止めた。壬生先輩の手から脇差が落ちてから、右腕を押さえて膝をついたのは直後であった。これで勝負は決したと。
「ゴメン、先輩。骨が折れているかもしれない」
「・・・・ひびが入っているわね。いいわ、手加減できなかったって事でしょう」
「うん。先輩は誇っていいよ。千葉の娘に、本気を出させたんだから」
「そう・・・・貴女、あの千葉家の人だったの」
「実は、そうなんだ。ちなみに渡辺摩利は、ウチの門下生。あの女は目録で、あたしは印可。剣術の腕だけなら、あたしの方が上だから」
その言葉に、壬生先輩は小さく微笑んだ。それは儚くも、屈託のない笑顔だった。
「お兄様、そろそろ解いた方がいいかと」
「そうだな。とりあえず風術を解いてっと」
風術を解いた俺達だったが、壬生先輩はちょうど倒れる直前だった。
「そう・・・・。ねえ、虫の良いお願いなんだけど、担架を呼んでもらえないかしら。何だか、気が、遠くなって、ね・・・・」
そのまま壬生先輩は、がっくりと倒れ込むとエリカはその身体を丁寧に抱き起した。
「大丈夫だよ、先輩。優しい後輩が、先輩を運んでくれるから。『呼んだか、エリカ』あらら、到着がお早いことで」
「そっちは勝負着いたようだな、まあ俺らはずっと勝負を見ていたけど。壬生先輩を運ぶ前に、テロリスト共を拘束してからにしよう。深雪」
深雪は返事と共に、拘束道具を取り出してから図書館にて倒れ込むテロリスト共を拘束してから壬生先輩をお姫様抱っこのように持ち上げた。深雪とエリカは、流石と思いながらだったけど。
「そうそう、エ
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