入学編〈下〉
エリカ対紗耶香
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据えられたような痛みが走った。
「・・・・・それがどうしたの」
その衝撃を、痛みを隠して、問い返す。
「いえいえ、どうもしませんよ?ただ確認したかっただけです」
エリカは相変わらず、両手を背中で組んだままだ。だが、隙がない。彼女の身体は、一見スレンダーに見えて廊下を塞ぐには程遠いが、すり抜けて通る「隙間」が一切ないと見た彼女だった。それに、背後に隠されたのは素手なのかどうかは分からない。何も持っていないのだろうか?
「・・・・急いでいるの、通してもらえないかしら」
背後から追いかけてくる気配はない。だが、一真なら気配を消すことは朝飯前だが焦る気持ちを抑えて、穏便に話しかけていた。最も一真は特別閲覧室で、投影型の映像にて彼女とエリカを見ていた。一真がこちらに来るなら、どちらかが倒れてからだろう。あとはここから通り抜けられる可能性が、ゼロに近いのだろう。
「一体どちらへ?」
「貴女には関係ないでしょう」
「答えるつもりは無い・・・・ということですね?」
「そうよ」
「交渉決裂ですね」
楽しそうに告げるエリカ。無茶苦茶な言い分だが、最初から彼女を通すつもりはない事は壬生にも分かっていた事だった。壬生は素早く、左右を見た。壬生は得物を持っていないからか、素手では戦っても勝てないと思ったからだった。CADはあるが、魔法を使うのなら、今付けている指輪であるキャスト・ジャミングは使用不可だ。視界の隅に、銀灰色の棒であるスタンバトンが転がっていた。リーチは少し短いが、慣れ親しんだ得物も代用となるだろうが、それを素早く拾い上げる。エリカはそのさまを呆れて見ていたけど。
「そんなに慌てなくとも、得物を手に取る間ぐらい待ってあげるのに・・・・・」
壬生の顔に血が上ったが、一人芝居ならぬ一人アクションの気まずさと気恥しさを誤魔化すように、エリカを鋭く睨みつけて叫んだ。
「そこをどきなさい!痛い目を見るわよ!」
「これで正当防衛成立かな。まっ、そんな言い訳をするつもりも無いけど」
エリカは興が醒めたような声で呟くと、背中に隠していた手を前に出した。右手には伸縮警棒、左手には本身の脇差。さっきまで真剣で戦っていた男子生徒が持っていた日本刀である。その日本刀をポイッと投げ捨てた。
「じゃあ、やりましょうか、先輩」
そう言って、エリカは右手を前に掲げた。壬生もまた、構えを取った。得物を正面に、右手に左手を添える。一方俺らは特別閲覧室から出て、深雪を腕の中に入れると風と同化するようにしてエリカと壬生を見ていた。同化する事で、例え得物がこちらに振り下ろしたとしてもダメージどころか傷一つ付かないからだ。さて、ここからが見物だな。諸手中段の壬生先輩と、片手半身のエリカだったが始まりは唐
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