相似なる赤と蒼は
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。名前も知らない兵士達。
私には近しい人だけいればいい。私はあの人とは違うから、私達が幸せならそれでいい。奪われないように平穏は作るけど、それも全部私達の為」
声に出して言ってみれば、チクリ、と胸が痛んだ。
罪悪感の痛みなのか、それとももっと違うナニカなのか、夕には分からなかった。
見上げれば、空の曇りはまだ晴れない。薄い所もあるがやはり空は見えず、光は差し込んでいなかった。
†
一つの指示を出した。
斗詩の部隊とあたしの部隊、そして夕を守る精鋭部隊を残して陣容に間を開けた。
遊撃の型を取ってはいたけど、中央の縦列もこれで終わり。どうせ向こうは軍師が接敵される事を想定して、複雑な陣容を組んでいるだろう。
こっちには強力な突撃手段が全くないから無意味なのに。斗詩の引き連れる部隊は、騎馬がたった二百しか居ないのだから。
列を組んでいるだけで戦っていない兵士が見える。がら空きのその背中は、あたし達の事を信じて疑っていない。当然だ。誰が共に戦う味方の事を疑えるのか。
これからする事は通常ならば下策。それも人の道を外れた策。しかし曹操軍には有効な手段。兵力が違う現在の状況だけで使えるモノだ。
敵軍師にとって一番困る嫌がらせ。敵将にとって実力が試されるお遊び。敵兵にとっては……生き残る為だけに戦える原初の舞台。
――“頭で測れる戦の在り方にしない事”
夏侯淵だけはあたしが止める。曹操が居ない状況でこっちの兵士の士気も最低線は持ってるから、あっちの士気を落としつつ、指揮系統への混乱を齎さなければならない。
楽進と于禁には分からないだろう。練度の低い中途半端な兵士達が、如何に粗雑で、如何にめんどくさくて、如何に不可測な存在であるのか。
黄巾如きと同じにしないで貰おう。あんな下らないモノとは全く違う。
理不尽に晒されながらも敵を殺さんとする兵士達が、この場だけ生き残りたいと願う強い想いが、這いずって足掻いて苦しんで狂気に堕ちる彼らが……どれだけあたしのお腹を膨らませてくれることか。
身体が熱い。血が滾る。背筋に来るのは抑圧されていた情欲。自然と、笑いが込み上げてきた。
「ひひっ、此処からはあたしの居場所にしてあげる。生きたきゃ殺しな、命を輝かせな、脳髄の空腹を満たしな。ヒトゴロシの狂気は、生きてるって叫びたい本能は、殺されたくないって抵抗は、殺したいって怨嗟は……みぃんな須らく無くせないモノだからね♪ あたしみたいに大切なモノを心に決めてない限り、秋兄みたいにぶっ壊れてない限り♪」
誰に聞こえずとも言葉を並べた。
口が歪む。嬉しくて仕方ない。みんなみんな堕ちてしまえばいい。戦場は誰しもに平等で残酷なんだから。
「追い詰められたケモノは餓虎のように凶
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