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乱世の確率事象改変
相似なる赤と蒼は
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 決定された策は曲がらない。元より斗詩の意見で変わる事は無かったが、これから行われる策を思えば、彼女の優しい心に悲哀が湧くのも詮無きかな。
 苦悶を刻みながらも、彼女は頷いた。自分が守りたいモノは、彼女達と共に掴み取らなければならないのだから、と。

「氣弾って最初の音のアレだよね? うん、分かった。
 でもちょこちゃんも無理しないで。麗羽様も、文ちゃんも、心配して待ってるんだから」

 心配を向けられ、キョトン、と目を丸くした明は、くつくつと喉を鳴らして、後に盛大に腹を抱えて笑い出した。

「ひひ……あはっ、あははははっ!」
「えぇ……? 私なんか可笑しい事言ったかな?」

 わたわたと慌ててから夕の方を見ると、彼女も可笑しそうに笑っていた。

「ふふ、気にしないでいい。明はきっと、本初と文醜が心配する様子を想像して笑ってるだけだから。でも……あの二人が心配してるとこ、想像出来る?」
「……」

 そわそわとしながらも帰ってくるを疑わず、遅いですわねぇ、と腕を組んでいる麗羽。
 こちらの事など何も心配せずに、よっしゃ突撃だぁー、と楽しげに戦場を駆けている猪々子。
 そんな二人が思い浮かんだ斗詩は、自分の発言の有りえなさに少し笑えた。

「……っ……た、確かに無いね」
「斗詩、あんた、くくっ、最っ高……あー、お腹痛い。猪々子が目をうるうるさせて心配してるって? そんなさ、あたしが苛めたくなるくらい可愛いわけないじゃん」
「つまり、そんなに可愛くなったら食べてしまいたい。そういうこと?」
「それはダメっ! あ……」

 急な夕の発言に思わず漏らした一言。明と夕は呆気に取られるも、意地の悪い笑みを浮かべた。

「あれ? ヤキモチ妬いちゃうんだ♪」
「文醜に報告しよう」
「もう! 違うもん! 私は別に――――」
「はーい、ごちそうさん。気分も解れただろうからそろそろ行くよー。じゃあ夕、行ってくるねー」
「ん、頑張って」

 顔を紅くして否定する斗詩の言葉を終わらせずに途中で遮り、明はひょこひょこと前方に歩いて馬に跨り、早々と進んで行った。

「うぅ、二人共あんまりだよぉ……って、待ってよちょこちゃん! 田ちゃん、行ってきます!」

 一度振り向き手を振った。
 たたっと駆けて行く斗詩の背を見送って、夕は何処か満たされたため息を一つ零した。
 斗詩も平穏な時間には不可欠なのだと思えた。これなら、さらに明の心も解されていくだろう、とすら。 

「……こんな時間が増えるなら、こんな家に出来るなら、この居場所も存外捨てたモノじゃない」

 遠くを見れば土煙が上がっている。人の負の声が連鎖して耳に響くが、心は一筋たりとて落ち込まない。

「その為にあなた達の命を生贄に捧げよう
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