相似なる赤と蒼は
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の突貫は計画通りに行えた。左右は、大量に運んできた矢を降らせた事によって脚が鈍り、漸く近接しての戦闘に突入した所だった。
何も問題はない。本来なら、稟への称賛を唱えるはず……であるのに、疑問と違和感が頭に浮かぶ。
敵将の旗でも一番警戒すべきモノはまだ出てきていない。聞いたことのない名前が並んでいるだけであった。
顔良と張コウがまだ後方で悠々と待っている。それはいい。まずは何に於いても兵数を減らさなければならないのだから。
たった一度の戦闘で決着が付くとも思えないが、あまりにも“出来すぎている”。
早々とそれを見切った彼女も、やはり一角の将の才覚を持っているのだろう。
沙和の仕事は凪の露払い。後方で指揮を代わりに行いつつ、自分の部隊を振り分けもする。
柔軟な対応力が彼女の武器にして力。徐晃隊のような連携は無いが、彼女一人で幾多の小隊を操れる。補佐に特化したその指揮方法は、兵達の男くささに反して何処か優しく思えた。
幾分経っても戦況は変わらない。雄叫びや怒号が激しく耳を打つ戦場は、あまりに真っ当で、あまりに普通過ぎる。
練度が違えば戦い方も違う。曹操軍の士気は今回の戦を前にして嘗てない程に高まっている為に圧される事も無く、兵士一人にしても二人、ないしは三人と相対出来るのではなかろうか。
倍を有する袁紹軍は、寡兵の曹操軍に押し込まれている。凪の存在あってこそではあるが、それでもこれはおかしいと感じた。
――秋蘭様が注意してくれてなかったら、勝てると思って押し込んだかも。
双剣を翳して指示を出しながら、そんな事を考えていた。
沙和は部隊を突出させない。押し込みながらも、左右の自軍の旗をしっかりと見て、楽進隊と于禁隊が出過ぎる事を制していた。
ただ、このまま膠着してしまうのも拙い。矢はその内尽きる。野戦に運べる矢の数はそれほど多くはない。ましてや……
――秋蘭様の部隊がアレをしたら……こんなに凄いんだ。
雨のような矢が接敵後も途切れなければ尚のこと。
左翼に配置されている秋蘭は、秋斗が考案した参列突撃の戦術をそのまま弓部隊に応用していた。兵列から繰り出される矢は一斉照射では無く時間継続を優先してのモノ。途切れる事のない矢が、正確な距離を測って繰り出されれば、これほど恐ろしいモノは無い。
問題は残存数に関して。まだ敵の主力は出て来ていない。それでもこの方法を続けるのは下策にも思えるが……こればかりは策を立てた稟を信じるしかなかった。
後方を一寸見やった。組まれた一段だけの移動櫓に立っている稟がこちらを見ていた。しかし、指示らしき動きは何もない。
焦れる心を抑え付けて、沙和は戦場で指示を出し続けた。
「ほら、ぼさっとしてないで直ぐに整列する! 玉引っこ抜かれたいか!」
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