相似なる赤と蒼は
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喉の渇きを潤そうと生唾を呑んだ。呑み込んだモノはやけに重く感じた。
「ううん。私が動いてちょこちゃんと田ちゃんの邪魔するわけにはいかないし、言われた事くらいしかしてないよ。怪しい動きは郭図さんに疑われちゃう、でしょ?」
浮かべたのは普段の微笑み。真っ直ぐに目を見つめて逸らさず。
自分でも驚くほど自然に、嘘が口から零れた。協調に重きを置いてきた彼女だからこそ。鉛のような重苦しい罪悪感が肩に乗った気がした。
彼女は怖かった。この目の前の女が、夕の予定外の動きをした自分をどうするのかが分からなくて。そして、麗羽と猪々子を見捨てられるのが、何よりも怖かった。
ふーん、と目を細めて見て来るも、明は深くまで聞こうとはしなかった。
「あんたの事、“信じてるから”」
有り得ないと思いつつも頷き返して、くるりと背を向けた明の斜め後ろを着いて行く。
脅迫の類。聞こえは良くても逃げを許さない強固な鎖。
――ちょこちゃんが信じてるなんて事は無いだろう。私が同じように狂ってないのもあるけど、文ちゃんみたいに素直で真っ直ぐじゃないから、信じて貰えない。でもこの戦が終わって、且授様も助かったなら……信じてくれるよね。どうか全てが上手く行きますように。
願いを紡いで天を仰ぐ。
曇天の空は心の内を表しているかのようにも見えて、湧き上がる哀しみで泣きそうになった。
†
戦前の舌戦、などというモノは必要とされていない。
開けた平野で面と向かい合い、矢の届かないと判断された距離にて、甲高い女の声と共にその戦は始まった。
「突撃ーっ!」
大槌を前に突き出す斗詩が先頭で掛け声を上げ、並み居る袁紹軍の兵士達は雄叫びを上げて曹操軍に突撃していった。騎馬は無く歩兵のみ。そして斗詩も明も動かない。
武将には劣るが、それでも兵達よりも武勇に優れている将達が指揮し、軍としてのカタチは為されている。
反して曹操軍は突撃してきた部隊をまず矢で射た。直射、曲射の数はイナゴの群れと見紛うかという程……と言っても、押し掛ける軍の全面に照射する事など出来はしない。
射た場所は左右。倍を有する敵から包囲されるのは危うい為に。
曹操軍中央には楽の旗。突出した袁紹軍中央は周りの惨状に目も呉れずに突撃し、激突する―――――前に、異質な攻撃を受けた。
白く輝く、まぁるい珠だった。先頭で構えていた灰髪の少女が脚を振り抜いた瞬間に発せられた、わけの分からないモノ。
光ったのは分かった。速度が速いのも理解出来た。ただ、兵士達はそれが何かだけが分からなかった。
後続は突撃してきている。一度走り出したなら、その程度の訳の分からないモノに怯えて脚を止めるわけにもいかず、群れを成して突撃する袁紹軍
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