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乱世の確率事象改変
相似なる赤と蒼は
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「ちょこちゃん。あなたの事は分かってる。分かってる、けど……そんなの……そんなのってないよ」

 責める視線は綺麗過ぎたから、チッ、と舌打ちを一つ。苛立たしげに目を逸らした明はため息を一つ落とした。

「勝ちたくないわけ?」
「う……それでも命ってさ、そんな簡単に使い捨てていいモノじゃないよ。例え勝利の為に無茶を命じるとしても……せめて率いる将の私達くらい、彼らを見てあげようよ」

 将として言えば、士気を上げ、鼓舞し、心を奮い立たせて戦に意識を向かわせよう……という事だ。
 斗詩個人の言い方をするなら、一人でも多く生き残らせる為に励まして元気付けてあげようよ、そんな所。
 優しい彼女は戦に向いていない。事務仕事の方が好きだと彼女自身も零したりもしていた。
 人として当たり前の事で、明の事を考えての発言でもあった。

――あー、綺麗事だ。堪らなく綺麗で、むず痒くなるほどに純粋で、“あの人”があたしと違って切り捨てなかったモノと同じ。でも、そういうのを押し付けられるのは……ごめんだね。

 は、と呆れたような吐息を吐いた。
 自分には似合わない。否、自分達の部隊には、それが似合ってなるモノか。

「ならあんたがあたしの部隊以外を見て鼓舞してあげりゃいいじゃん。あたしにはあたしのやり方があるから好きにしな。
 でもねー……あんたに大事な事を教えてあげる」

 人を惹き込む妖艶な笑みを浮かべた。ペロリと唇を人舐めする舌は赤く、濡れた唇の輝きは扇情的に過ぎる。
 斗詩はぶるりと震えながらも、昏い黄金の双眸に釘づけになった。

「兵士は死ぬのも仕事の内なんだー。人殺して金貰ってメシ食う事を選んだんだからさ、命じられるままに死ねばいい。こっちの都合で無理矢理集めた兵士だとしても同じだもん。戦場に立つなら、黙って従って死ねばいい。生きたいって願うなら足掻いてもがいて、敵を殺して生き延びればいい。命令を聞かない奴等が生きたいって言うなら自分でなんとかするべきだし、此処に立った時点で誰も助けたらダメなんだよ。
 何より夕の邪魔するなら、例え同じ軍だとしても……あたし達の敵だ♪ 足手まといになるなら、あたし達張コウ隊が殺すだけ。そうすりゃ言う事聞くかんねー」

 片目だけ細めた悪辣な笑いと楽しげな声。
 ぞわぞわと背筋を這い回る悪寒に、斗詩は自分の腕で身体を抱きしめる。

――ダメだ。この子は本気だ。味方を殺せば軍が混乱するはずなのに……それをさせない狂気を持ってる。後ろから羊を追い立てる犬のように、兵士さん達に……戦場で強制的に前を向かせるんだ。

 明は関靖の最期の策である“捨て奸”を受けてから線引きが外れていた。戦の固定概念が打ち壊され、邪魔をするなら味方すら敵、と考えられるようになった。味方すら殺して、よ
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