相似なる赤と蒼は
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たしに寒気を起こさせる程の重圧。
でも、頭の中は変に冷静で、
「ふーん、結局一対一とかしちゃうんだ」
いつものように心は冷えて、
「いいよ。“あんたは死んでも構わないらしいから”」
効率的に目の前の人を肉袋に帰る方策を練り始める。
「やろうよ夏侯淵。楽しく踊ろう」
夏侯淵が弓に矢を番えた。
あたしは大鎌を片手に鎖分銅を回転させる。
名乗りも無く、気合の声も無い。
似てるけど違うから、自分達が望む結果を求めて、あたしとこいつは戦うだけ。
大きな鉄球が視界の端で唸りを上げ、部隊の奴等に飛んで行った。それすら雑な情報として脳髄が処理していく。
深く息を吐いたのは同時。
口を引き裂いたのも同時。
動き出したのもまた同時。
赤と蒼のあたし達は、楽しい楽しい死の舞踏に脚を踏み入れた。
回顧録 〜レイメイノヒカリニ〜
今度こそ上手く行く。そう確信出来る程に舞台を整えた。
前の時よりも絆をより強固に繋いだから。
何事もない日常に於いて皆の笑顔が増えたから。
潰れそうになっていた心も、彼女の笑顔の為なら頑張れたから。
ただ、一つの戦いで脳髄には澱みが湧いていた。
嘗て死なせてしまった人を助ける事が出来た。
嘗て生き残っていた人が死んでしまった。
ズレがあった。小さな小さな歪みだった。心の歯車がキシリと音を上げた。
あの時も取捨選択をしていた。自分には当然の事だった。
でも、顔も声も人となりも既に知っていたなら、こんなに違う。
男の妻が泣いていた。前の時には幸せが確かにあった人なのに絶望に堕ちていた。
男の子供が泣いていた。休日に楽しく街を散策していた姿はもう見られない。
失ったのは彼女達では無い。それでも、共に戦った人達だ。
嗚呼、これが自分の罪で罰だ。
全てを助けるなんて、出来る訳がないのだから。
一人誰にも話さずに、背負って行くしかないのだから。
弱い心は救いを求めていた。
じくじくと脳髄の端から黒く染められていくほど。
カノジョニハナシタラササエテクレル
否
カノジョナラチカラニナッテクレル
否
ソウスレバキットセカイヲカエラレル
断じて、否。
優しい彼女は、きっと自分を助ける為に手伝おうとするだろう。
そうして、彼女はまた、命を零してしまう。
それだけは絶対に出来なかった。
だから……
異物な自分は、死ぬまで嘘つきでいいと誓いを立てた。
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