相似なる赤と蒼は
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聞けば、きっと楽しいと答えるだろう。お互いに倒すだけで自分の大切なモノの為になるのだから、それが嬉しくないわけが無い。
視界は良好。敵兵の動きが若干引いたのは、夏侯淵なりの一騎打ちの合図か。
涼しげな顔で指を立て、ちょいちょいと二回動かしてきた。掛かって来いと笑っていた。やっぱりあんたは似てるよ、夏侯淵。
「あはっ♪ “あたし達の成りそこない”のくせに挑発とか……いいねー、乗ってきた♪」
接敵はまだ遠く。馬が邪魔で仕方ない。だから背に乗って、ぐ……と脚に力を込めた。
敵の兵士は槍で突いても来ずに、矢を打つ事すらして来ない。思いっ切り戦った上でねじ伏せたいと、彼女が伝えているのだ。
あたしもあんたもそんな柄じゃないのは分かってる。でも、譲れないモノってのがあるんだろう。この戦場で決めてしまわないと、誰かにあたしとの戦いを譲らざるを得ないから……そうでしょ?
あたしは夕の為に。あんたは覇王の為に。これをただそれだけの戦いにしたいのだ。
跳躍は曇天に向けて、羽を広げるように両の腕を広げた。
幾本もの矢が夏侯淵から連続して放たれた。空中に出た時点で効率重視の一騎打ちの始まり。そんなもんは分かり切っていた。
身体を回転させ、巻きつかせるように鎖を流して弾くだけでいい。この長さなら、届き得る。
分銅程度ではずらされるから、落下の速度を乗せて大鎌を投げつけた。避けきれない矢が肩を掠める。あいつの馬は、頸が綺麗に落ちた。倒れる前に飛び退き、引きつけの斬撃すら警戒してるとは恐れ入る。
着地同時に睨み合えば、あたしも彼女も、やっぱり同じ笑い方。
ゴクリと生唾を呑み込む音が鳴る。曹操軍の兵士達であっても、この手の見世物に目が無いのか。いや、きっと事前に命じてあるだけ。
「やっほー、久しぶりだね、夏侯淵」
「ああ、洛陽以来だな。健勝そうで何より」
「ひひっ、殺そうとしといてよく言う」
「くくっ、違いない」
ひらひらと手を振れば、にっこりとほほ笑んでくれた。口を引き裂けば、頬を吊り上げてくれた。
ふと、別の殺気を近くに感じた。兵のモノよりも大きくて、夏侯淵並には届かない。
周りの旗を確認したいけど出来ない。目線を逸らすのも侭ならない。この距離なら、それだけで命取りになる。
「……虎視眈々、ってわけ?」
「さあ、どうだろう?」
円形に切り取られたこの舞台はあたし達だけの場……では無いのか。それでいい。どうせ初めから、お綺麗な一騎打ちになんかならないのだから。
「兵が沢山死ぬよ?」
「我らは華琳様の為に」
「楽進と于禁も死んじゃうかもよ?」
「御元に勝利を捧げる為に」
「あんたも此処で死んでいいっての?」
「この身この魂は、我が主と共にある」
忠義の徒に思
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