相似なる赤と蒼は
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の報告では、延津に駐屯する曹操軍は二万五千の兵を率いている、とのこと。どれもが精兵揃いで、徐州で戦った兵をそのままこちらに回してもいる。
徐州で戦っていない夏侯淵隊は、集めた情報から推察する限りは弓と弩が主体。しかし、それだけで戦場に立つかと言われれば否。
後方支援を主軸として戦ってきた部隊ならば、長く戦場を経験してきたという事。練兵で積み上げる力が弓と弩だけであろうか。剣の腕も、槍の腕も、連携にしても、曹操軍でも大剣や神速が率いる部隊と同じく抜きん出ている事だろう。
洛陽での戦で個人の力は見た。呂布相手である為に明も本気にならざるを得なかったが、共闘しながらも互いの癖を読み合っていたのだ。
ただ、その後に為された報告で明は違和感を覚えていた。
――大事な大事な片割れが隻眼になって張遼と戦う羽目になったのに、夏侯淵は即座に戦場を優先した。多分、あいつは……あたしに近い。曹操が誇りあれって願うから一線を越えてないだけで、どうすれば敵を楽に殺せるか分かってる奴だ。
一線を越えていないとは、理解した上で効率を“選ばない”こと。明はソレを愚かと断じる……では無く、警戒を最大限に引き上げていた。
戦は効率的である程に良いモノだ。将を一人討てば部隊が乱れ、軍の指揮も目に見えて下がる。例えそれが悪辣な手段によるモノであろうと、柱の抜けた軍の統率は乱れてしまう。もし、命令不服従な通常の死兵が顕現するならば、莫大な兵の被害が出ようと罠にも嵌めやすく、他の将を討つ機会すら作り出せる。
それを分かっていながらしないのは、主の為に己を律しきれて、兵の犠牲を厭わないということ。さらには、こちらの外道手段の対抗策も考えている事に他ならない。
なるほど、と明は一つ頷いた。
お綺麗な戦とは全く違い、血みどろの殺し合いとも別モノ。万が一の場合は部隊同士の本物の戦いとして、夏侯淵を抑えなければならない……そう、結論付けた。
「あー、めんどくさ……」
「ちょこちゃん、そんなにげんなりしてたら兵達にも気合入らないよぉ」
ため息を落とせば、泣きそうな声が隣から上げられる。うるうると瞳を潤ませた斗詩が不安を押し出して見つめてくる。
遥か後方では自分達の様子も兵達には見えないだろう、とは明も言わない。
「そういうあんたの方がダメだと思うけど?」
「え? あ……」
口に手を当ててクスクスと楽しげに笑うと、斗詩が顔を茹で上がらせて俯いた。
「ま、いいんじゃない? どうせ――――」
――死んで貰う奴等だからさ。
にたり、と口が吊り上る。昏い色が金色の瞳に輝く。
赤から蒼へ、明の顔を見ていた斗詩の顔からみるみる内に血の気が退いていった。それでも、彼女は圧されずに、ぐっと唇を強く噛んでから言葉を零した。
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