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その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方2
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その答えを出す前に、右腕の衝動が全てを飲み込んでしまったが。
「これで、少しはマシになったか……」
 皮肉な事に、そのお陰で意識が鮮明になった。わき目も振らず転がり込んだ浴槽――浴室そのものから這い出す。脱がなかった法衣が水を吸って重い。しかも、血混じりの水が滴り落ちて部屋を汚した。それを見て舌打ちする。とはいえ、さすがにそこまで気を配る余裕などなかったのだから仕方がない。
「もう夜、か……」
 余計な激痛を与えてくる塩を洗い流すべく、水を張ろうとしたところまでは覚えているのだが――どうやら、そのまま浴槽の中で気を失っていたらしい。目が覚めた時には、赤黒く濁った水の中に首まで浸かっていた。別に今さら溺死の心配などする必要はないのでどうでもいい事だが。
(フェイト達は戻ってきていないか……)
 あの子がどれだけの傷を負っているのかは分からないが……おそらく致命傷と呼べるような傷はなかったはず。なのに、何故戻ってこない?
「クソッ……。ろくな想像が働かないな」
 右腕が疼く。管理局の介入までに決着をつけられなかったというのは、致命的な落ち度と言っていいだろう。今度こそ責め殺されている可能性があった。
(何が守ってやるだクソったれ……)
 守ってやるどころか傍にいる事すらままならない。自分に対する憎悪も巻き込んで、意識がどす黒く染まっていくのを感じる――だが、
(これじゃまだ動けない……)
 血が沸騰しそうな程の殺戮衝動であっても、壊れかけのこの身体を動かすには足りないらしい。今の状況のまま身体が回復してしまえばそれはそれで厄介な事になるが――ともかく、今は雷撃が掠めた心臓がまだ回復しきっていない事が何より致命的だった。なけなしの魔力で精製した呪血が巧く身体に行き渡らない。……まぁ、その呪血が溶け込んだ水に浸かっていたおかげで、多少は楽になったが。
「不死の怪物が聞いて呆れるな……」
 衝動ではなく、単純な限界により明滅する視界の中で呻く。どうせ死にはしないが、ただそれだけだ。まだろくに動けそうにない。怪物を名乗るには少々無様すぎる。だが、いずれにしても心臓が復元されるまでもう少し時間が必要だ。おそらく、夜明けまではかかるだろう。ため息をついてから、治癒魔法――いや、鎮痛魔法とでもいうべきか――を込めた包帯を身体中に巻きつける。不死の怪物改めミイラ男の完成だが、あくまで鎮痛だ。代償の治癒は言うに及ばず相殺できる訳ですらない。それに、完全に痛みが消える訳でもなかった。だが、これで心臓の治癒に集中できる。これなら、
「さて、と……」
 しばらくして。どうにか身体が動くようになってから、這いずるようにして即席で作り上げた異境へと踏み入る。ここでなら、心臓が回復した直後から衝動に任せて暴れ始めても問題あるまい。
「フェイトもいない事だ。羽
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